法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

コンクリート技術

 昨日は,ほぼ一日パソコンの画面に向かってしゃべっているか聞いているかしていました。午前中は,コンクリート技術という講義で,ダムについての話をしました。ダムの種類や施工方法,設備関係などダム建設に関わる講義をする回で,以前ダムの現場にいたことやダムについての本(トコトンやさしいダムの本(日刊工業新聞社,2018年発刊),見学しよう工事現場3 ダム(ほるぷ出版,2011年発刊))を執筆した関係で,いつもより熱の入った講義というか話をしてしまいました。やはり自分が経験したことというのは,実際その目でみて体験していることなので,次から次へと話のネタというか話したいことが湧き出てきます。一般の人というか二十歳前後の学生でダム大好きというのはそうそういないと思いますので,このおじさん何を熱く語っているのかときっと思いながら聞いていたのではないかと思います(聞いていないで,他事していたかもしれないですし,寝ていたかもしれませんが)。対面の講義であれば少なくとも相手がどんな様子か分かりますが,オンラインですと,写している画面に向かって話をするだけで,学生の顔(彼らは絶対顔を出さないようにしています。強制的に出させてもよいのかもしれませんが,そこまでする気もしないので,画面出しなさいとはこちらも言いません)が全く見えない状態で話をしているので,ついつい自分の世界に入り込んでしまいがちです。私としては,教科書に載っていることを淡々と話すよりも,自分の体験談だとかいろいろ失敗して学んだことなどを学生に伝えられるコンクリート技術(コンクリートの施工に関わる内容を中心とした講義)の講義の方が他の講義科目よりも楽しいというのが本音です。そのため,シラバスどおりなかなか進まないというところもあります。私の研究室にきた学生たちに聞くと,コンクリート工学はとにかく難しいといいます(コンクリートの基本事項と配合設計の事しか話していないので,何が難しいのか今でもわからないのですが)。私の研究室に配属になった学生でコンクリート技術を履修した学生は半分にも満たないので(この講義は選択科目です),単純な比較はできないのですが,コンクリート技術の方が面白かったと言ってくれます。どんなところが面白かったと聞くと,現場の話がとても面白かったことや水中コンクリートやダムの話をするときの先生の熱の入った話し方が面白かったと言ってくれます。講義を聴いてくれている学生には,自分の思いが少しは伝わっていると思い嬉しくなりました。

 午後は,基礎ゼミナールという今年から始まった科目で,昨日は各教員のゼミの模様を紹介する回でした。特に研究室でやっている定例ゼミの様子を見てもらっても面白くないので,以前ブログで書いたように(12月23日の“基礎ゼミナール”参照)東小金井の駅から小金井キャンパスまでの経路と実験室及び研究室の施設紹介(学生がナビゲータをしています)の動画を見てもらって(途中で止めながらいろいろ解説を加えています),どんな印象を持ったのかや実験などでどんなものに興味があったのかなどをひとりひとり聞くという形式で講義を行いました。夕方17時からは,論文博士のM氏の論文審査小委員会を2時間30分ほど行いました。一日ほぼ画面を見て話したり聞いたりしていたので流石に疲れました。金曜日にも一日卒業研究の発表練習をオンラインで行うので,一日中画面と睨めっこすることになります。

岸辺露伴は動かない

 年末年始は,いろいろな番組が放送されるので,面白そうだと思うものを片っ端から録画しています。今回も年末の12月28日~30日に放送された“岸辺露伴は動かない”をこの三連休で観ました。NHKの番組の宣伝でたまたま見かけて面白そうだなと思って予約しました。元々ミステリーや探偵ものが好きなので,これもその類かなと思っていました。後から子供に“ジョジョの奇妙な冒険荒木飛呂彦が書いた漫画をドラマ化したものだよ。結構評判になっているよ”と教えられました。ジョジョの奇妙な冒険を読んだことがない私としては,何が評判なのかさっぱり分かりませんでした。子供から,岸辺露伴ジョジョの奇妙な物語の中に出てくる漫画家だそうで,今回のドラマはそのスピンオフ作品だと教えられました。私は,別に誰の原作であろうとドラマ自体が面白ければよいので,あまり気にせずドラマを観始めました。第1話が“富豪村”で,ドラマの開始が露伴の部屋(漫画を描くための作業部屋)に泥棒が入り,物色しているところに露伴が現れ,“ヘブンズドア”と言うなり,泥棒二人組の顔が割れて,本のページが捲られていくという変なオープニングとなっています(ジョジョを読んでいる人たちにとっては当たり前なのかもしれませんが,私はかなりショッキングな映像に映りました)。その人の記憶が本のページに記されているのを読んでいるのは,なかなかシュールな映像でした。この第1話は,禁足地が話のベースになっていて,最近流行りの番組ではないですが“ポツンと一軒家”ならぬ,山奥にポツンと豪邸村があるという設定で,そこに行く道もないというものです。また,その場所の主(実は山の神)がマナーに厳格で,マナー違反で一度は窮地に立たされる露伴が機転と知恵と能力(特殊能力で露伴自身ギフトだと言っているもの)で乗り切る話となっています。このドラマでとても私自身印象に残ったのは,禁足地を設定にしたところで,ドラマを観終わった後,宮崎駿監督の“千と千尋の神隠し(2001年公開)”の話を思い浮かべました。あれも神々が住む場所に人間が立ち入ってしまったところから話が始まっています。まさに禁足地に踏み込んでしまったのです。“もののけ姫(1997年公開)”でも人がかつて禁足地としていた場所に踏み入れていく話が出てきます。“風の谷のナウシカ1984年公開)”でも人が足を踏み入れてはならない(踏み入れられない)腐海の奥の話がでてきます。人が立ち入ってはいけない場所,神聖なる場所には人知を超えた何かがあり,そこにある何かに原作者たちはそそられるものがあるのかもしれません。宮崎監督も荒木氏も自然を恐れぬ振る舞いに対する警告を伝えたいのかと思える内容(深読みしすぎているのかもしれませんが,ドラマや映画を観ているとそんな気持ちにさせられます)でした。第2話は,禁止用語の話なのですが,これも観ていて“天空の城ラピュタ”をイメージしてしまいました。ドラマは言霊の話として描かれており,言葉に憑りつかれてしまう話なのですが,私は天空の城ラピュタの決して発してならない破滅の言葉“バルス”を思い浮かべていました。人が決して踏み入れてはならない場所や発してはならない言葉には,それなりの理由があると私は思っています。第3話は臓器移植で臓器提供者の記憶や癖などが移植を受けた人の中に入り込んでいく話で,これはいろいろな番組で取り上げられているものです。確かに,設計図としてのDNAに何が隠されているのか解明されていないので,DNAによって記憶や知識が子孫に伝承されていくことも当然あっておかしくないと思います。そうでなければ,自分の子供や孫の顔かたちが似てくることもないと思います。

 この世界には,決して常識や理屈だけでは説明しきれないものがまだまだたくさんあると思っています。自分たちは,いつのまにかそのようなものが見れなくなったというか感じ取れなくなってしまったのかもしれません。この岸辺露伴は動かいというドラマ,実は奥が深いドラマなのかもしれません。

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岸辺露伴は動かい

 

ひび割れ制御技術について

 昨日,海外の学会への論文執筆について書きましたが,温度応力に起因する温度ひび割れの制御技術についてあまり詳しく書きませんでしたので,今日はそれについて少し書きたいと思います。この内容自体は,コンクリート技術という講義でも少し話をしています。

 コンクリートのひび割れは,いわばコンクリートの宿命ともいうべきもので,水とセメントの化学反応(水和反応)時の発熱は硬化体の生成に欠かせないものです。また,セメントの水和反応に使用する水はコンクリートに加える水の45%程度で,残りの半分以上は施工性能を確保するためのものです。いわば,練混ぜをして型枠にコンクリートを打ち込んでしまえば必要ない分といえます。そうはいっても,セメントの水和反応に必要な水が未水和のセメントの周りに何時もちゃんとあるかというとそうでもないのです。この辺りが厄介なところで,理論上水和反応に必要な水だけにして,残りを例えば高性能AE減水剤に置き換えてしまえば,一見合理的なようにみえますが,水セメント比が20数%の高強度域のコンクリートでは,非常に粘性が高くなることや,水和反応したいのにその周囲に水がなくて,未水和のまま残ってしまうセメントも出てきてしまいます。ただし,水を減らすことはコンクリート硬化後の有害物質や劣化要因となるイオンなどをコンクリート内部に拡散させていく媒体を低減させることになりますし,何より乾燥収縮によるひび割れの抑制に効果があります。水を減らすことは,強度に必要なセメントを減らすことにもなり,ひび割れ発生の低減にも繋がります。よく言われることですが,コンクリートからひび割れを全くなくすことは現在使用している材料ではできないので,有害なひび割れをなくす努力をすることが大事なのです。また,ひび割れを制御することはある程度可能なのですが,完全にコントロールすることは非常に難しいので,ひび割れを制御ではなく,抑制すること(例えば,ひび割れ発生はある程度許容し,ひび割れ幅を耐久性や水密性に極力影響を及ぼさないように制御すること)を念頭に置いた対処方法が採られることが多いのです。このあたりの制御技術は,日本が得意とするところでもあります。もちろん,ひび割れを生じさせないために,丁寧な施工を行うことは言うまでもありません。ただし,これまではこの丁寧な施工というものがなされていない場合が多かったのです。とりあえず,きたコンクリートを型枠内に打ち込んで適当にバイブレータをかけて,初期養生もいい加減に行い,型枠をすぐに外してしまうような施工が結構行われていました。これでは,いくらひび割れ制御を行おうとしても,それ以前の段階でひび割れが生じてしまうことになります。コンクリートは,生モノで丁寧に扱わないとすぐに壊れてしまうものだと思って施工してもらえると,それだけでもひび割れはかなり減ることになるのです。制御対策に多くの費用を費やす前に,施工を丁寧に行うことが実はひび割れ抑制の早道と言えます。

 どんなものでもそうだと思いますが,愛情を持って接すれば必ず応えてくれます。いい加減に扱えば,いい加減なものにしかならないと思います。どんなことに対しても真摯に向き合う姿勢が大事だと思います。愚直なくらいがちょうどよいくらいではないかと思っています。これは,人の教育でも言えるのではないかと思っています。

論文査読と添削

 例年,年末年始は学部生から提出された卒業論文のドラフトのチェック,大学院生や委員会などで自分が共著となっている日本コンクリート工学会年次論文集の原稿のチェックなどがあり,ここ2週間くらいはずっと論文を読んで,添削する日々が続いています。会社に勤めていた頃や大学に移って間もなくの頃は,自分で日本コンクリート工学会年次論文集の原稿執筆(多い時で一度に3編くらい書いたこともありました)をしていたのですが,いつの間にか添削する側になってしまいました。それでも,ここ数年は何とか年次論文集だけでなく他の論文集への執筆なども細々ですがしています。最近は,学会への論文投稿よりも学会誌などへの原稿執筆の依頼が多く,年に数編書いています。昨年の後半は,ヨーロッパの学会から論文投稿の依頼(実際は国内の他大学の先生が編集委員になっていて,その方からの依頼でした)があり,12ページほどの英語論文を執筆しました。内容は,日本におけるマスコンクリートのひび割れ制御技術の現状と課題についてです。あまり知られていませんが,日本のマスコンクリートの温度ひび割れ制御技術は現在世界トップクラスで,欧米の研究者からも一目置かれています。世界トップクラスまでいったのは,まさに先達たちの血と汗と涙(はないかもしれませんが)の結晶の賜と思っています。今から50年ほど前までは,欧米,特にアメリカが温度ひび割れに関して世界をリードしていたといえます。戦前のフーバーダム建設では,コンピュータもない時代に温度ひび割れ制御の膨大な数値計算をすでに行っています。戦後においても多くの制御技術や数値シミュレーション方法についての提案を行ってきました。日本は,それらの技術の取得に必死な状態でした。転機は,戦後の高度経済成長期でのインフラ整備において,多くのマスコンクリート構造物の建設があったことです。これらのビッグプロジェクトにおいて,いつも技術者たちの頭を悩ませていたのが,温度ひび割れ問題でした。橋梁基礎や原子力発電施設など鉄筋コンクリート構造部材にマスコンクリートを適用することから,ダムのように骨材寸法を大きくし,スランプを施工できる範囲で小さくして,単位セメント量を極端に少なくするようなことはできません。そのため,その他の方法として低発熱セメントの開発や新しいプレクーリング,ポストクーリング方法の開発,温度応力によるひび割れ制御のための解析手法の開発などが行われました。研究分野だけでなく,実務としても適用可能な技術の開発がその当時行われ,多くの成果を生み出しました。それらの成果が土木学会のコンクリート標準示方書や日本コンクリート工学会のひび割れ制御指針で体系的にとりまとめられたのです。それらは,世界に類を見ないものとなり,世界トップクラスの制御技術が確立していったのです。こうした制御技術の歴史というか変遷を論文でとりまとめました。東南アジアなどでは,今でも欧米のひび割れ制御規準を運用しています。もっと素晴らしい制御技術があること(予測解析の技術も含めて)を彼らに知ってもらうためと思い書きました。

 学部生の卒業研究もそれらの制御技術の発展の一翼を担っているという意識で書いてもらいたいのですが,当然彼らはそのようなことを知る由もなく,難解な文章(稚拙な文章と書くと怒られそうなのですが,もう少し日本語勉強してもらいたいと思います)を毎日読まなければならない身にもなって欲しいと思います。大体,1月半ばくらいになると私自身が読むのに疲れてきます。次に,私に提出する時はのど越しすっきりするような文章というか内容にしてもらいたいと切に願っています。

この橋の向こう(同期会(続き))

 トイレから出てきたところに,三浦が待っていました。真理子は,ちょっと驚いた様子で三浦に軽く会釈してから皆のいるところに戻ろうとします。すると,三浦が“この後,どこか二次会に行かないか。二人で行くの嫌だったら,土木メンバーでどう?”と言われます。真理子は,突然そのようなことを言われて“明日も仕事だし,今日は一次会で帰ります。土木の皆で集まりたいのであれば,また別の日に設定したらどうですか”とちょっとつれない返事を三浦にしてしまいます。“分かった。他の人たちと相談してあらためて土木の飲み会企画するよ”と三浦がいいます。真理子はその場を逃げるように飲み会の場に戻ります。席に戻るや否や,優子がすかさず真理子の横に来て,“さっきトイレの近くで三浦君と話していたでしょう。何の話していたの”と聞いてきます。真理子は,“この後二次会に誘われたけど,明日も仕事だし断ったの。そうしたら,今度土木のメンバーで飲み会しませんかと誘われた。それならまた企画してくださいと話しただけだよ”と言います。“そうなんだ。三浦君もしかして真理子のこと気になってるんじゃないの”と優子が少し憮然とした表情でいいます(このあたりは,最近のドラマというか恋愛映画っぽくできればよいのではと思っています。もともと,そんな恋バナ中心の映画にしたいとは思っていないので,この後の展開をどうするかはまた考えていきたいと思います)。真理子は,優子の気持ちなど到底わからずに,なんでこんなにしつこく聞くのだろうと思っていました。

 そうこうしている間に,予定の時間も過ぎて同期会は終了しました。小見山が“これから二次会行くけど,どうですか?”と皆に声をかけます。事務の女子はこれで帰りますとそそくさと帰っていきました。建築グループの女子は建築の男子社員と一緒に二次会にいくことにし,土木のメンバーは土木の男子社員だけで行こうということになりました。友里恵は,小見山たちのグループに付いていきたそうで,真理子に“一緒に二次会,小見山君たちと行かない?”と誘いますが,真理子は“明日も仕事だし,これから二次会行ってたら,終電間に合わなくなるかもしれないから,私は寮に帰る。友里恵,行きたかったら行って来たらいいじゃない。その代わり,明日起きれなくて遅刻しても知らないからね”といいます。“真理子,いじわる言わないでよ。わかったわよ。一緒に寮に帰る”と友里恵は渋々真理子と一緒に帰ることにします。優子は,土木のメンバーたちに誘われていましたが,他の女子メンバー行かないのなら行かないと言って,帰っていきました。三浦は,少し残念そうな顔をしながら真理子の方を見ていましたが,他の男子社員たちと新宿の街に消えていきました。真理子は,一緒に行った方がよかったのかなと少し後悔しましたが,土木のメンバーで飲み会すると言っていたし,今日のところは帰って寝ることにしました。友里恵との帰途で,寮の近くの駅に着いた時,急にお腹がすいた真理子は,“何か食べていかない?”と友里恵に言います。“私もなんかお腹すいてきてたんだ。おじさんみたいだけど,ラーメン食べていかない?”と言われ,“私もちょうどラーメン食べたいと思っていたんだ。この先に中華屋さんあったから,そこに行こうよ”と言って,二人で町中華の店に向かいました。

この橋の向こう(同期会)

 小見山と友里恵が二人で話をした後,“折角だから,設計部の新入社員で同期会やることにしない。土木の男子と建築の女子,事務の子たちも呼んでやろうよ”と友里恵が真理子と優子に話します。小見山も建築の他の三人に話をします。真理子は,これから長い付き合いにもなるので,同期同士での集まりは賛成である旨を友里恵に伝えます。優子はどっちでもよいというような顔つきながら,言葉の端々や表情に参加しますという雰囲気を醸し出してもらいます。幹事は,言い出しっぺの小見山と友里恵がすることになり,他の同期に声掛けすることになりました。

 1週間後,新宿の居酒屋で同期会が行われました。当日用事で行かれないという事務の女子1人を除いて,総勢15名が集まっての同期会となりました。女子6名,男子9名でワイワイガヤガヤの飲み会となりました。会が始まってしばらくして,小見山が“それでは,各自自己紹介していってください”と言って,小見山の席の隣の友里恵から順番に時計回りで自己紹介をしていきました。半分以上が地方出身者で,優子や事務の女子2人,男子社員2人が東京出身で,他は北海道から九州まで散らばっていましたが,ほとんどが関東の大学出身者でした。事務の女子を除いて,学部卒で入ってきたのは,土木で2人,建築で1人だけで他は大学院出でした。真理子は,土木の男子社員と建築の男子社員を見比べながら,心の中で“建築の子の方が洗練された感じで,土木の子の方が何となく野暮ったい感じがする。でも,建築の子たちは皆線が細そうな感じで,現場出たら一発で辞めてしまいそうな感じがする。土木の子たちは,上司に怒鳴られようが,作業員に追いかけまわされようが,全然気にしないでやっていく野太さが感じられる。こんなところにも,土木と建築の違いがあるんだ。”とつぶやきます(映画では,当然音声として流れます)。真理子が男子社員の方をじっと見ている姿を目ざとく見つけた優子が“何男の品定めしているのよ。まさかこの中の子と付き合おうなんて考えているんじゃないでしょうね”と真理子に詰め寄ります。真理子は首を横に振りながら“別にそんなこと思っていないよ。傍から見たら,建築と土木なんて同じに見えるかもしれないけれど,こうして一緒にいるところをみると,建築と土木の子って全然違うなって思ってみていただけよ。優子もそう思わない。”と優子に言います。“そうかな。私には同類に見えるけど”と優子がいいます。そこに友里恵が会話に割り込んできて,“二人で何話しているの。男子の品定めでもしているの”と言います。それを聞いた二人が思わず吹き出してしまいます。“何がおかしいのよ。あー,図星だったんだ”というと,真理子がすかさず“友里恵と優子って,全然性格違うけれど,考えることは一緒なんだ”と大笑いします。他の同期が,いきなり真理子が笑い出したのを見て,何がそんなにおかしいんだという顔で一斉に真理子の方を見ます。急に,自分に視線が集まって,気恥ずかしくなった真理子が“ちょっとトイレ行ってくる”と席を立ちます。その様子をじっと目線で追う男子社員が一人いました。土木の設計部に配属になった三浦です。実は,新人研修の時から,真理子のことが気になっていたのです。新入社員研修の時は,一度も声をかけられないままだったので,今夜の同期会で声かけようと思っていたのに,なかなかそのチャンスがありませんでした。真理子がトイレに立ったのをみて,自分もトイレに行くことにして,真理子の後を追います。それをじっと見ていたのが,優子でした。続きは,また別の機会で書くことにします。

この橋の向こう(新入社員編(同期))

 設計部に配属となった同期の真理子と友里恵と優子が,3人で会社の食堂のテーブルで昼食を取っている(映画としては,やはり窓際の丸テーブルか少し奥まった大きめの四角いテーブルのどちらかになるのですが,女子トークのみであれば窓際で,今回設定した同期との会話を考えると,少し奥まった四角いテーブルにしたいと思います)。友里恵が“橋梁グループには,女子の先輩が2人いてどちらも優しい先輩だったよ。私を指導してくれている先輩は,自分で設計に携わった橋梁の現場に何年も行っていて,この4月に戻ってきたばかりだと言っていたよ。橋梁グループの課長補佐みたいなんだけど,男性社員にテキパキと指示出したりして,キャリアウーマンって感じ。わたしもあんな風になりたいな”と話をします。真理子は,もしやと思い,“その人の名前わかる?”と聞くと,友里恵が“確か,苗字は小野さんといったかな,グループの人たちは苗字で呼ばなくて皆”真帆さん“て呼んでいたよ”と答えます。ここで,真理子の顔がアップになって“真帆さん,現場から戻ってきたんだ,また会って話聞かせてもらいたいと伝えておいてくれる”と友里恵に早口で言います。ここで,高校の時と学部4年生の会社訪問で偶然会ったときの映像がフラッシュバックのように映し出されます。友里恵と優子が同時に“知り合いなの?”と声を揃えて聞きます。真理子は“真帆さんは,私がこの道に進むキッカケとなった人なの。高校3年生の時に地元の現場で偶然真帆さんを見かけて,その時の作業員の人たちに指示出している姿がすごく格好良くて,私もこんな土木技術者になりたいとその時思ったんだ。真帆さん,まだ入社して数年しかたっていない時だと思うんだけど,若いのになんというか風格さえ感じたんだ”と二人に話をします。真理子は,研修中に真帆に会えるというのが嬉しくなって,思わず顔が微笑んでいるのをアップで撮りたいと思います。一方,優子は“原子力グループは,震災後の再稼働に向けて,凄く忙しいみたいで,とりあえず資料だけ渡されただけで,放っとかれぱなしの状態。皆,何か殺気立っている感じで迂闊に声もかけられない感じ。これから2か月間何をしたらよいかさっぱりわからない”とほとんど愚痴っぽい感じで話をします。真理子は“トンネルグループも忙しそうだよ。でも,指導役の新巻さん,ちゃんとグループの業務だとか今抱えている案件のこととか2時間近くかけて説明してくれた。結構優しい人だったよ。私が質問したら,今すぐ全部覚えなくてよいからと言われちゃった。この先長いのだから,少しずつ覚えて行けばよいとも言われたよ。確かに初日から頑張りすぎたら,この先持たないしね。”といった話を二人にします。その後は,三人とも自分の生い立ちだとか,何故土木の道を選んだのか,彼氏の話など他愛無い話をしていると,4人の男性社員が真理子たちのテーブルに近づいてきました。“僕たちも新入社員なんだけど,一緒にランチしてもいいかな。我々は建築設計グループに配属になったんだ。僕が小見山,こっちが佐藤,鈴木,中山。新入社員研修の時に見かけたかもしれないけれど,100人以上いたからわからなかったよね。”とフランクな感じで話をしてきました。小見山自体は,誠実そうなちょっとイケメン風,佐藤はチャラい感じ,鈴木は気難しそうでかなり神経質な感じ,中山は,芸術家っぽい感じ(風体も含めて)という設定にしたいと思います。真理子自体は,全く興味なさそうにしていましたが,友里恵がノリノリで小見山にいろいろ話しながら,メール交換までしてしまうという設定にしようと思います。優子も興味ありそうな感じながら,少し引いた感じという設定にしたいと思います。次回は,同期会のことについて書こうと思います。