法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

研究室の伝説のS君

 昨日,研究室の飲み会の話を書いていて,そういえば飲み会の時必ず話のネタになるS君のことを思い出しました。これまで私の研究室にはいろいろな学生がいましたが,いろんな逸話を残した学生としてはダントツのような気がします。優秀で,至って真面目なのですが,時々大ボケをかますところがあって,ある意味いじられキャラのような存在でしたが,皆に好かれていました。

 彼は,最初から私の研究室を希望して,かつ院にも進学することをいち早く表明してくれた優秀な学生でした。卒業研究では,鉄筋腐食状況を非破壊で推定するための手法についての検討を行いました。本来であればその流れで大学院も耐久性関連の研究となるのですが,院に進んだ他2人も耐久性関連の卒業研究であったことから,物性関連(若材齢時の体積変化に伴うひび割れについての研究)の研究を行ってもらうことにしました。その当時,社会人ドクターで物性関連のテーマで研究していたA氏をS君がサポートすることになりました。

 最初の逸話は,彼がM1の時の日本コンクリート工学会の年次大会でのことです。私は,ちょうど海外出張で行けなかったのですが,A氏をはじめドクターの人や院生がその大会に参加しました。大体学会に行くと夜は研究室の飲み会をするのですが,お店の予約などは確かS君がしたのではなかったかと思います(幹事役を務めたはずです)。雰囲気の良いお店をセレクトし,研究室の皆で行ったそうです。そこまではよかったのですが,店に入って部屋に案内されるなり,S君はいきなり上座に最初に座ってしまったのです。同行した先生や嘱託の方たち,A氏はじめドクターの方たちを差し置いて最初に,しかも上座に座ったのです。皆一瞬唖然とした後,A氏に“お前どこに座っているのかわかっているのか。それも幹事役が最初に座ってどうすのか”と怒ったそうです。本人は,それまで全く気が付かなかったようです。

またある時,コンクリート構造物の劣化調査に院生とドクター2人,共同研究の方たちといった時のことです。途中現場に行くのにフェリーに乗らなければならないのですが,確か帰りの便の時だったと思います。皆が乗車してフェリーから降りるときに,彼だけ少し遅れてきて,A氏が車のドアをロックしてしまい,彼が乗れなくなりかけた時です。何を思ったのか,徐に五千円札を取り出してA氏に窓越しに見せて,これで乗せてくれという仕草をしました。その時,A氏が“金で片をつけるつもりなのか”と言ってしばらくドアを開けなかったものですから,彼も必死になってお願いしますと懇願してようやく乗せてもらったということがありました。

 ベトナムでの国際会議の時も色々やらかしてくれました。まず院生3人が空港で待ち合わせをしていたのですが,待ち合わせの時間近くなってもS君が現れないので,連絡したところ,成田空港から出発なのに,何故か羽田に向かっているところで,もし連絡がなかったら,そのまま飛行機に乗れなかったかもしれなかったのです。何とか間に合って,無事ベトナムに着いたのですが,実は彼は海外が初めてだったかで,私に幾ら位お金を持っていったらよいですかと聞かれたので,ベトナムは物価が安いので現金は五千円くらいあれば,後はカードで支払ったらよいよというようなことを言ったようです。彼は,それを真に受けて,すべて(交通費なども含めて)それだけしかもっていかなかったようです。ホテルの宿泊などは事前に払ってあったので問題なかったのですが,会議の登録料を支払っていくて,それを支払って全財産無くなってしまいました。私も彼に所持金それくらいでよいよといった手前,彼に1万円渡して,これを滞在費にしなさいと言って手渡しました。その夜,ホテルにそれぞれ戻ったのですが(私は比較的安い三ツ星のホテルに泊まっていたのですが,院生3人はパックだったかで五つ星のホテルに宿泊したのです!),彼は夜一人で街に出て,バイクのお兄さんに,バイクで夜の街の観光に連れて行ってあげるといわれ,ホイホイとバイクの後ろに乗って,その挙句私が渡したお金の半分だったか取られ(かなりのぼったくりんのに,相場を知らなかったのか,簡単に渡してしまったようです),さらにそのお兄さんに女紹介するよと言われ,女はいいです(No thank you とでもいったのか分かりませんが)というようなことを言って部屋に戻ったそうです。その後しばらくして部屋をノックする音がして,出てみるとオカマが部屋の外に立っていたそうです。その後も携帯ホテルに忘れたとか,初めての海外出張が散々であったようです。

 この他にも,インターンシップに行って,最後の日に歓送会が催され,会社の役員の方に,どんなところに就職したいのかと聞かれ,普通だったら,御社のようなところを考えていますというようなことをいうのですが,S君ははっきりと“公務員になります”と言ったそうです。本人悪気があるわけではないのですが,その場の雰囲気とか察することができない性分であったような気がします。

そのS君ですが,本人の希望通り公務員になって頑張っているようです。まだまだ彼の逸話はあるのですが,この辺にしておきます。皆さんよい週末を自宅で過ごしてください(Stay Home)。