法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

ウィトルーウィウス建築書

 今日は,本の紹介をしたいと思います。最近やっと読み終えた本で,“Vitruvius De Architectura(ウィトルーウィウス建築書)”です。建築学科の学生は,建築史を学ぶ時に必ず読む本ではないでしょうか(土木の学生はほとんど読んだことがないかもしれません)。私は,大学の講義でローマンコンクリートの説明をするときにこの書を引用するのですが,これまで必要な箇所を引用した本しか読んでおらず,建築書自体読んでいませんでした。一度は読んでみないとと思いながらいたのですが,ある時学外での委員会と委員会の間の時間(以前は3時間以上あるとよく映画を観に行っていました)に,三省堂紀伊国屋に立ち寄って,新しい専門書が出ていないか探していたら森田慶一氏が訳した“ウィトルーウィウス建築書(東海大学出版部)”が目に止まり,思わず手に取ってレジに向かっていました。

 建築書自体は,建築家としての心構えや,どんなところに建物をたてたらよいのか(ちょっと風水っぽい内容も含まれていますが,結構よく読むと理屈にあった話になっています),どんな材料を使ったらよいか,柱の長さや装飾,比率の出し方,物理学,数学(図学に近い),日時計の造り方,暦の読み方,星座の話,起重機の造り方,使用方法,攻城兵器などの機械についてなど,当時建築家となるために必要と思われることが,10書に渡って記されています。

 コンクリート材料に関わる書は,第ニ書でその第5章~第8章に書かれています。特に第5章では,生石灰では固まらないのに,消石灰生石灰焼成(本では炉に投げ入れられて火の激しい力につかまるとしています)にして水と砂と一緒に混ぜると固まると書かれています。また,山砂の場合,川砂や海砂の場合の砂と石灰の割合(配合)も示されており,川砂,海砂に関しては砕いてふるいにかけた瓦屑を1/3混ぜるとより一層よい材料の調合(粗骨材を加えることに通じている)になるとも書いてあります。

 神殿の間取りの話(柱間隔の話等)も読んでみると結構面白いのですが,訳者が意訳していないので,ちょっと何が書いてあるか何度も読み返さないとわからないところも散見されます。

 この著者の名はMarcus Vitruvius Pollioというのは分かっていますが,生年月日も出生地もわかっていません。ただし,本文中にもちょくちょくカエサル(シーザー)の名前が出てくるので,アウグストゥスローマ帝国の初代皇帝)の時代に生きた人であろうと推察されます。面白い本かといわれると難しいですが,土木・建築史を学びたいと思う人に一度は読んでおいてもらいたい本だと思っています。

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ウィトルーウィウス建築書