法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

めざすは飛鳥の千年瓦

 タミヤ模型の社長の田宮俊作氏のインタビューした後,半月のなかったと思いますが(確か10月の末だったと記憶しています),次の“この人に聞く”のインタビューのために奈良に向かいました。生駒の駅の改札で今回いろいろインタビューの交渉などをしていただいた土木学会関西支部のO女史,カメラマンといつもの土木学会のN課長と待ち合わせて,タクシーでインタビュー先の工場に向かいました。

 今回インタビューする方は,山本清一氏で本瓦職人をされている方でした。“この人に聞く”の候補者としてタミヤ模型の社長以外にも何人か挙げていたのですが,まさか続けて採用されるとは思ってもいませんでした。私の“この人に聞く”のコンセプトは,土木以外の人で,ものづくりをされている方もしくは技術の伝承に関わっている方でした。ですので,私の趣味であるプラモデル作り以外の寺社仏閣などの古建築に関わっている方を何名か挙げたのですが,山本氏はその中のおひとりでした。

 山本氏を知ったのは,東大寺の大仏殿の昭和の大修理の番組に出ておられて,あのような巨大な鬼瓦をどのように製作するのかとても興味があったのですが,しばらくしてそのことを忘れていました。その後,たまたま本屋で山本氏の著書である“めざすは飛鳥の千年瓦”を見つけて,読むうちに是非とも会ってみたいと思い,土木学会誌の企画に名前を挙げたのです。言い出しっぺの役得なのか,山本氏のインタビューも私がすることになったです。

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山本清一氏の著書”めざすは飛鳥の千年瓦”

 山本瓦工業は生駒の山の中にある工場でした。事務所に案内されて山本氏とお会いした時の印象は,何か敬愛する宮大工の西岡常一氏とどこか似ている(風貌というより雰囲気)と思ったことです。一つのことを成し遂げたというかある境地に達した人が醸し出すオーラのようなものだったのかもしれません。とても気さくな方で,こちらの質問に一つ一つ丁寧に答えていただき,インタビューの後も工場の中をご本人に案内していただきました。古い瓦がたくさん積んであるところで,“このあたりが飛鳥時代,ここらあたりが奈良時代,この辺が平安時代・・”と話をされました。無造作に置かれている古代瓦は大事な見本ですというようなことを言われたのを記憶しています。

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古代瓦などが置かれた棚

 帰りには,タミヤ模型の時のように机の上に置く小さな鬼瓦をお土産にいただきました。その後,唐招提寺の金堂の解体修理で,鴟尾を新しく製作する際のドキュメンタリーで山本氏が若い職人たちにその唐招提寺の鴟尾づくりをさせている姿を見た時,技術の伝承がちゃんとされているのだととても感動したのを覚えています。

毎年年賀状のやり取りをしていたのですが,一昨年八十六歳でお亡くなりになりました。心よりお悔やみ申し上げます。