法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

学生たちよ,討論せよ!

 モリナガさんとの新企画について調べている時に,いくつか面白い記事が見つかったので,それを紹介したいと思います。2006年当時学会誌にもいろいろ企画があって,その中にCEレポートというのがありました。学生委員と一緒に大学の授業などを紹介するものだったと思います。2004年に学科の名称を土木工学科から都市環境デザイン工学科に変更して,それに伴って新カリキュラムをいくつか立ち上げた時期でしたので,そのいくつかを紹介しようと思って記事を作成しました。

 ひとつは,次回紹介したいと思いますが,「都市環境デザイン入門」という1年生を対象とした単位のない科目を立ち上げました。土木工学概論のような科目で,土木工学科から都市環境デザイン工学科に名前が変わって,何をする学科も知らないで入学としてくる学生に対して,ガイダンスのような科目を立ち上げたのです(後に導入ゼミナールという1年生の必修科目に変わっていきました)。数人の先生の持ち回りで,この学科でどんなことが学べるのか,土木って何をするところかなど講義するものです。

 もうひとつは,3年生のゼミナール(当時は工学ゼミナールという名称でした)で,各教員の個別対応での授業でしたが,当時学生のコミュニケーション能力の低さを嘆いていて,施設系の先生でディベートしましょうかということになって始めたものです。後に学科として行うようになったのですが,最初は3研究室だけのこじんまりしたものでした。そのことを記事にしようと書きかけたのですが,他のことが忙しくて結局書きかけで提出しないままとなってしまいました。その時の書きかけの記事を以下に紹介したいと思います。

 

“学生たちよ,討論せよ! ~ゼミ対抗ディベート大会~

 私が企業から大学に転籍して早4年,これほど学生の就職が大変なものとは知らなかった。自分の学生時代,理工系の学生は学校推薦さえもらえばすぐに内定がもらえて,企業をいくつも回ってようやく内定をもらうのは文系の学生だけだと思っていた。それが,昨年からようやく上向いてきたものの,バブル崩壊後就職難の時代が続き,学生が就職試験を受ける数は3~4社(実際学生が申告している範囲である。実際はもっと多いと思われる)であり,一昨年は当学科において就職未定者が15%を超える事態となり,これは何とかしないとまずいと思った。

 一方,学生の就職内定状況を分析してみると,成績上位者が必ずしも希望の企業に決まっておらず,どちらかというと成績は今一であるが,とにかく元気があってよくしゃべる学生がいくつも内定をもらってくるといったものであった。

 当学科の学生だけでなく,今の理工系の学生に総じて言えることなのかも知れないが(間違った意見であれば申し訳ない,学生諸君),学生同士であれば臆することなくよくしゃべる学生が,人前で話しなさいというと黙ってしまうというのを良く見かける。講義の中で“何か質問があるか”と聞いても全く反応がないが,後で授業評価アンケートを行うと,“難しくてわからない”,“質問に答えてくれない”などという意見を書いてくる学生たちがいる。

 企業の人事部の方に以前話を聞いたとき,理工系の学生は集団面接やグループディスカッション,圧迫面接に弱いと言われたことがある。確かに前述した点から考えても,人前で自分の意見を述べることが上手ではないのは確かである。では,どうしたらよいのかと思案していると,学科内の一人の先生が“ディベートをやったらよいのでないか。それもただやっても学生のモチベーションが上がらないだろうから,ゼミ対抗にしたらよいのでないか”と提案されました。これは,面白い是非やりましょうと言うことになり,賛同してくださる先生を募った。“

 この当時(2005年,2006年)は,就職氷河期で結構就職が大変だった時期でもあり,成績は優秀だけど口下手な学生に是非ともコミュニケーション能力をつけてもらいたいと必死だったと思います。記事を読みながら,ふと来年以降この新型コロナウィルス禍で就職が大変にならなければよいがと思いました。私は,学生たちに急いでどこでもよいので就職しますというのではなく,しっかりとスキルを身に着けてもらいたいと思っています。こんな時だからこそ,大学院に進学したほうがよいと思っています(急がば回れです)。学生たちには目先の事に捉われて5年先,10年先の自分の立ち位置を見失わないでほしいと思っています。