法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

海洋堂とガレージキット(その2)

 キングギドラガレージキットのあまりに素晴らしい出来栄えに衝撃を受けて(現在の目で見れば,レジンの塊で,モールドも甘いなどと言われる代物ですが,その時は本当にそれまで見たことないようなものだったのです),俄然いろいろ欲しくなってきました。ただし,当時の価格で2万円~5万円するものでしたので,学生の分際でおいそれと手が出せるものではありませんでした。しかしながら,模型雑誌に掲載されていた高さ50cmの巨大バラゴン(“フランケンシュタイン対地底怪獣(1965年公開,日米合作映画(東宝とベネディクト・プロ),監督:本多猪四郎ゴジラの監督として有名),特技監督円谷英二(言わずと知れた特撮の神様),出演:高島忠夫,ニック・アダムス,水野久美他)”に登場した怪獣で,私の好きな怪獣のベスト3のひとつです)の完成写真の記事がカラーで載っていて,どうしても欲しくて,いろいろバイトしてお金を貯めて購入しました(発売当時に価格が2万円で,ゼネラルプロダクトと海洋堂が販売を行っていました。私は,海洋堂から購入をしました)。

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バラゴンのガレージキットの広告

 作者は当時ゴジラ造形の第一人者だった井上雅夫氏で,自らイノウエ工房(後にイノウエアーツとなる)というガレージキットメーカを立ち上げて,海洋堂,ゼネラルプロダクツ,ビリケン商会,ボークスといったところからゴジラを中心としたガレージキットを世に送り出しました。映画からそのまま飛び出してきたようなその造形は,ゴジラファンの私の心を射止めて,その後作品が出るたびに何万円もするものを購入(当然社会人になってからですが)しました。井上氏は,ガレージキットの黎明期を牽引した一人と言って過言はないでしょう。

 海洋堂から送られてきた大きな段ボール箱の中に,茶色い塊が新聞紙で包まれていくつも入っていて,樹脂(レジン)の匂いと剥離剤の匂いが鼻を衝く代物でした。その大きさに驚くとともに,キングギドラ以上のモールドに感激しきりでした。また,それだけ巨大なのですが,鋳型で抜いたように中は空洞で,無垢のものと違って以外と軽いのにも驚きました。製作自体は,2年後に会社に入って独身寮で夜な夜な行っていました(作るのがもったいないような気がしてなかなか手が出なかったのです)。現在は,市ヶ谷の研究室に飾ってあるのですが,色々なところが壊れていて,補修跡が痛々しい状態です。修復作業とリペイントについては暇を見つけて行いたいと思っています。

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バラゴンのガレージキット(作製当時はこんな感じでした)

 海洋堂は,その後怪獣だけでなく,美少女フィギュア,恐竜シリーズ,キャラクターものなど,本当に自分たち(原型師海洋堂のセンム)が造りたいものを,費用対効果など完全に無視してどんどん世に送り出していきました。著作権の問題などもあったと思いますが,それらをクリアーしながら作品を出していったのです。作品に対するこだわりは尋常ではなく(ガレージキットとは本来そのようなものです),後にチョコエッグが爆発的なヒットをするのですが,そこにはお菓子のオマケではなく,一つの作品としてのこだわりの詰まったものでした。200円足らずのチョコのオマケだけれども,決して手を抜かないという精神が,世に認められたのだと思っています。たかがオタク,されどオタクの文化が世間に受け入れられたのです。

 ちなみに,私が会社に入って初任給で買ったものは,海洋堂の1/4のナウシカ(ボーメ作)でした。東京の蒲田にあった童夢という模型屋(今はなくなっています)まで買いに行きました。ナウシカについて話をし始めると止まらなくなるので,これはまた別の機会に書きたいと思います。

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風の谷のナウシカガレージキット