法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

モリナガ・ヨウの土木現場に行ってみた(デイ・シイ セメント工場)

 モリナガさんといろいろな土木現場へ取材に行くようになって,ある時モリナガさんから“コンクリート構造物の現場取材をしていますが,構造物に使われている材料というか原料がどんなものか見てみたいのですが”といわれました。それならばということで,川崎にあるセメント工場の取材を行うことになりました。株式会社デイ・シイのセメント工場は,川崎駅からタクシーで20分ほどのところの第三京浜道路と岸壁の間にあります。セメント工場の規模としてはそれほど大きいわけではないのですが,歴史のあるセメント工場です。創業者は,実業家である浅野総一郎氏で,京浜工業地帯を創設した人です(深川の官営セメント工場を払い受け,浅野セメントを創立しています。日本におけるセメント産業の立役者の一人でもあります)。実はデイ・シイのセメント工場がある場所の住所(町名)が浅野町(当然,浅野総一郎の名前から名づけられたものです)なのです。浅野総一郎の話はこれくらいにして(来年の大河ドラマ渋沢栄一なので,浅野総一郎もちょくちょく出てくると思います),セメント工場での取材の様子を書きます。

 デイ・シイへは,私自身これまで何度か伺ったことがあったので,ある程度勝手知ったる場所なのですが,モリナガさんは当然初めてでその敷地の広さに驚かれていました。敷地の多くは,原材料や燃料の貯蔵に使われていると話をしましたら,近くまで行ってみてみたいですということで,普段は行かない原材料が山積みされている場所を見に行きました。次に,原料の粉砕工程を見にボールミルのある場所に行ったのですが,ちょうど稼働中でスゴイ騒音がしていて,モリナガさんは思わず耳を押さえて(耳栓はしています),ボールミルのある建屋から飛び出してこられました。また,外にボールミルに入れる鉄球があり,モリナガさんは興味津々で見ていられました。そこからキルンに向かう途中に燃料としている色々なゴミ(紙の束やCDが山積みになっている場所等)の山を見て歩きました。案内してくださった職員の方から,何でも燃やしてしまいますが,ペットボトルなどの塩素系の材料だけは燃やさないという説明がありました。また,人だったら完全に燃えてなくなってしまいますよというお話までしていただきました。粉砕した原料を焼成するキルンは,デイ・シイの場合3本あるのですが,その内の1本は定期点検中でキルンの中を見ることができました。また,稼働しているキルンで防火板越しにキルンでの焼成状況を見せてもらうことができました。その後,キルンの下を歩いたのですが,体感温度で40℃以上はあったのではないかと思います。冬でもここを通ると汗をかくほどで,この時も歩いているだけで汗ダクになりました。

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セメント原料である石灰石の貯蔵状況

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ボールミルの中に入れる鉄球

 焼成してる状況を見た後,セメントを貯蔵しているサイロの上に登らせていただくことができ,工場全体を俯瞰することができました。事務所に戻る途中で市の土木遺産になっている大正時代からあるセメントサイロ(現役です)を見せていただきました。

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大正時代からあるセメントサイロ

 取材後,モリナガさん,土木学会のN課長,私は川崎駅近くの中華料理屋で3人とも塩の補給と称して塩ラーメン(私は塩味のタンメン)を食べました。いつもは学生を連れての見学で,学生自体何となくおざなりな感じを受けるのですが(授業だから,仕方なく遠くまで来てやったというオーラを出している学生が毎年何人かいます),モリナガさんは見るもの聞くものにとても感動(リアクション)されるので,今回はとても楽しい見学(取材)となりました。