法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

御前山ダム

 土木学会誌の“モリナガ・ヨウのぶらっとぉ土木現場”で,前回は沖縄の大保ダムの取材の時の話を書きました。大保ダムは重力式のコンクリートダムでしたが,ダムにもいろいろ種類があって,今回紹介するのはロックフィルダムという土と石(岩)でできたダムです。実は,大保ダムより先に取材に行ったのですが,学会誌の掲載順序の関係(編集委員会で年間掲載スケジュールが決まっているのですが,現場の都合で取材自体前後することがよくありました)で,学会誌には先に大保ダムが掲載されました。

取材は,2007年の6月中旬に行きました。取材場所は,茨城県の中央付近で那珂川にある御前山ダムでした。取材当日,モリナガさんと上野駅で待ち合わせして,特急に乗って水戸まで行き,駅に迎えに来てもらった現場の車で工事事務所まで行きました。いつものように簡単な説明を受けて,ヘルメットだけ被って(長靴は履きませんでした)現場に向かいました(コンクリートダムのように打設面を湛水養生したりしないので,長靴は不要でした。長靴にまつわる話は前回の大保ダムのブログを読んでください)。現場は,盛り立ての最盛期でしたので,コアの部分(粘土を使用した不透水層,遮水層),ダムを安定させるためのロック部分がちょうど層になっているところが観られました(表面の浸食を防止するためのリップラップはまだ施工されていません)。また,岩着部分にコア材を団子状にしたものを貼り付けている様子も見ることができました。現場には,ほとんど人影がなく,ダンプやブルドーザ,ローラやユンボなどが動き回っていました。施工現場から少し離れたところに大きなテントがあり,その中で先ほどのコア材を球状する機械が設置されていました。これまでは,人の手でコア材を丸めていたそうで(それはそれで泥団子作るみたいで楽しそうですが),自動でできるようになってかなり省力化できたそうです。

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盛り立ての状況(御前山ダム)

 その後,車でロック材を採取するための原石山に連れて行ってもらいました。ちょうど発破をかけるタイミングでしたので,安全な場所まで移動して発破をみました。私は,ダム現場で何回か見ていますが,モリナガさんは最初だったので,かなり緊張されていました。発破自体は岩盤を前に押しやるものなので,映画などのように石などが飛び散ることはないのですが,ドンという音がして,地盤が少し盛り上がった程度でした。それでも,結構岩盤が盛り上がったので,結構派手な発破ですね現場の方に話すと,分かりますかといわれました。モリナガさん自身は,ちょっと拍子抜けしてしまったようです。

 現場には,巨大な丸い石が山積みされていました。現場の人に聞いてみると,結構出てくるようで,調べてみると数千万年前にできたものだそうです。阿古屋貝の中に異物を入れて真珠ができるのと同様に,海底で核となる微粒子の周りに結晶化したカルシウムや炭素が長い期間かけて徐々に付着して大きくなってこのような巨大な丸石ができたとのことです。

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現場に山積みされていた巨大な丸石

 これまでにもロックフィルダムの現場には行っていましたが,今回の御前山ダムは見るもの,聞くもの初めてのものばかりでした。とても楽しい取材をすることができました。帰りは,水戸駅でお約束の藁に入った水戸納豆をお土産に買って帰りました。