法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

成瀬ダム見学(2日目後半)

 コンクリート試験室で思わぬ再開があり,K君と話し込んでしまって,試験室自体の説明を聞けませんでした。一つ彼との昔話で書き忘れたのですが,彼の結婚式で出されたお酒のことです。最初ビールを飲んでいたのですが,食事が和食だったので日本酒を飲もうと思い,給仕にお酒をくださいと言って渡された一合瓶から盃に入れて飲んだところ,日本酒ではなく焼酎でした。それも熱燗だったのでびっくりしていたら,一緒に出席していた現場の人から,九州ではお酒といったら焼酎が普通で,日本酒飲みたいときは日本酒といわないと出てこないし,置いていないところもあるといわれました。こんなことを思い出しながら,卒業生のM君とコンクリートの製造について説明を受けました。

成瀬ダムでは,いわゆる内部配合がCSGであり,外部配合と呼ばれるものがここでは保護コンクリートと呼ばれているそうです。CSG自体は,高い耐久性(凍結融解抵抗性やすり減り抵抗性など)がないことから,上流側と下流側に耐久性の高いコンクリートを配置しています。重力式コンクリートですと,外部配合の厚さが3~4mあるのですが,成瀬ダムでは半分以下の厚さの1.5mしかないと聞いてちょっと驚きました。保護コンクリートの骨材は,原石山から採取できるものの品質が劣ることから,購入骨材を使用しているとのことでした。このあたり,現地発生材を利用しているというCSG工法の謳い文句とは異なっていることがわかり,これからの課題の一つであろうと思いました。CSGで使用しているセメントは,単位量も少ないことから普通ポルトランドセメントを用いており,保護コンクリートは結合材量(セメントと混和材の合計量)が多いことから,ひび割れを極力抑制するために中庸熱フライアッシュセメントC種を用いているとのことでした。ただし,通常セメント工場でプレミックスしたものを納入されるのですが,東北で同じように大量にフライアッシュを使用する現場があることから,セメント工場でのプレミックスができず,現場にセメントとフライアッシュを別々に納入して,製造時に混合して使用しているとのことでした。それであれぱ,季節に応じてフライアッシュの量を変化させることもできる(滝沢ダムでの実績もあります)のではと話をしました。

コンクリート製造設備関連の見学の後,試験施工の場所に案内されました。CSGに用いる骨材の微粒分に粘土系のものが多く含まれていて,擬凝結のような現象(すぐに流動性がなくなって固まったようになってしまう現象)があり,締固めなどがうまくできず,CSG内部に空隙が多く見られたことから,超遅延剤を通常の10倍以上添加して施工を行っているそうです。その実証実験をした場所を見せてもらったのですが,超遅延剤を入れていないものは,すごくポーラスでかつ露出面がボロボロになっているのに対して,超遅延剤を混和したものは,密実で露出面もとてもきれいな状態でした。発注者でダムの権威といわれているF氏にこれを見せて,本堤施工では超遅延剤を入れたもので施工したいと進言したところ烈火のごとく怒ったそうです。自分では問題ないと思っていた(CSGを推進していた人でもあります)ものにケチを付けられたと思ったのでしょう。他にもある学会の編集委員会で私が大変な思いをしたN氏も建設省のダムの権威でした。一線を退いた以上周囲に対して聞く耳をちゃんと持ってもらいたいものだと思った次第です。これだから役人は嫌いです(あくまでも私個人の意見です)。試験施工の場所を見て現場の見学は終了となりました。帰りに胆沢ダムに寄ったのですが,そのことについては別の機会に書こうと思います。