法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

とある委員会

 昨日の午後は,以前から寄付研究を頂いている研究会の理事会に出席しました。これまでに,2回ほど講演をしているのですが,今年事務局の方から委員会メンバーとして参加してもらいたい旨の依頼があり,これまでいろいろ研究の資金援助などもしていただいていたので,快くお引き受けいたしました。主な活動は,混和材を多量添加したセメントの普及や研究開発であり,研究会にはセメント化学の重鎮であるO先生やS先生,コンクリート分野の重鎮であるN先生などが顔を連ねていいます。元々セメント会社のD社の技術部長だったK氏と長く共同研究をしていて,その方がD社を辞められて,建設会社のT工務店にいらっしゃったY氏と一緒に立ち上げられた研究会と聞いています。

 K氏とは,会社を辞められてからもいろいろお付き合いがあり,ここ数年は大学院での非常勤講師をお願いしています。K氏は,セメント化学に関して非常に幅広い知識と経験を持っておられ,次々と新しいセメント(混合セメントも含めて)の商品開発を行ってこられました。私が最初にご一緒させていただいたのは,当時日本最大のLNG地下タンク(20万kL)の建設工事で,新規に開発した低熱スラグセメント(LSC)を用いた設計基準強度60N/mm2の低発熱型高強度コンクリートの諸物性について検討した時でした。私は,コンクリート全般について検討しなさいと上司から言われ,フレッシュ性状(当時開発されていた自己充填コンクリートの試験方法を用いて検討しました),流動性,ポンプ圧送性について検討を行いました。ポンプ圧送性については,実際に配管してコンクリートを圧送して,管内圧力,圧力損失量や吐出量,圧送前後のスランプフローの変化等の測定を行いました。

 実験場所は,東京アクアライン(当時は東京湾横断道路といっていました)の川崎人工島(現在の風の塔)の資材の仮置きヤードの場所を借りて行いました。当時,低発熱セメントは三成分系セメント(ポルトランドセメントを基材として,高炉スラグ微粉末,フライアッシュを混合したもの)が主流だったので,それよりも性能のよいセメントの開発を目指したものでした。実際に,断熱温度上昇量は同一配合条件で10℃程度低い結果となっており,凝結時間も早く(型枠にかかる側圧を低く抑えることができる),初期強度が大きい結果が得られており,実際の工事でも使用してもらいました。ただし,フレッシュ時の粘性が非常に高く,現場で作業する人たちには不評だったと記憶しています。その後は低熱ポルトランドセメントの登場や新しいコンセプトの低発熱型高炉セメントが開発されて,LSCの使用はたしかこの工事だけだったような気がします。

 この仕事がきっかけで,以来K氏とは30年近くお付き合いさせていただいております。その後も低収縮型低発熱高炉セメントB種の開発や高エーライトセメントの開発などを一緒に行ってきました。そのK氏が2ヶ月ほど前に体調を崩されたと連絡をもらいました。K氏の奥様からも次年度の大学院の非常勤講師を辞退したい旨の連絡をいただきました。今年もK氏から依頼された研究を行っており,その結果について議論できないのが残念です。昨日の委員会もK氏は事務局を務められているのですが,欠席されていました。また,お元気になられて,いろいろセメントのお話を聞きたいと思っています。