法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

セメントの水和発熱に起因するひび割れ

 今日は,大学院の講義でセメントの水和発熱に起因するひび割れについて話をしました。以前にも書いたのですが,私の研究のライフワークになっているのが,温度ひび割れに関する研究です。講義内では,このあたりの話をあまりしませんでしたので少し書こうと思います(以前のブログにも同じような内容が書かれているところもあるので,重複しているところはご容赦いただきたいと思います)。

 私の卒業研究は,パイプクーリングによる熱除去効果についてというテーマで,3次元熱伝導方程式とパイプ内の熱の支配方程式(管内流速を考慮した式)を連成させて,管壁面に特殊な熱伝達境界(液相と気相との熱伝達)を設けて,パイプ内を流れる水が周囲のコンクリートから熱吸収させる過程を解くものです。解析手法としては,3次元有限要素法を用いて行うのですが,プログラムに組み込むための熱伝導方程式の離散化をどうするかが分かりませんでした。今のようにネットでちょっと調べてなどということができないので,図書館に行っては関連しそうな書籍を探し,さらに名古屋の三省堂などの大型書店に行って関連する書籍を購入して勉強しました。本に書かれている内容を理解するのだけでも難儀しましたが,それを自分が行う解析の式に適用しなければならず,半年くらいはひたすらコーディング(プログラム作成)するための勉強に明け暮れました。私の先生は,当初非定常熱伝導解析(発熱項と時間項を加えたもの)まで行って欲しかったようですが,私の進捗があまりに遅かったので,定常熱伝導解析のプログラム作成と,管壁面での熱伝達係数の決定(電力中央研究所で実施した大型実験のデータを基にパイプ内の温度勾配が一致するように熱伝達係数を変化させました)までで良しとしてもらいました(それでもプログラムを書き上げて,バグ取して,解析が回ったのは1月末でした)。何とか卒業論文の提出には間に合いましたが,自分としては到底満足するものではありませんでした。大学院の進学を決めていたので(当初は,大手建設会社に就職するつもりでしたが,大学院の先輩が学科内の選抜に選ばれ,私はその会社に行きたかったので,大学院に進学することを決めて(6月くらい),それから大学院の入試の勉強を始め,何とか合格しました(この大学のように学内推薦のようなものはありませんでした)),卒業研究の審査が終わると,すぐに非定常熱伝導解析のためのプログラム作成を始めました。私の時代は,卒業旅行などというものはなかったので,大学院に進むメンバー(7,8割いました)の多くは,そのまま大学にきていました。研究室の先生の伝手で,何か月か語学研修(向こうのコンサルなどにアルバイトしに行くもので,今でいう海外インターンシップのようなものです)するものも何人かいました。学部の時は,自分の研究の意義のようなものは全くわかっていなくて,ただひたすら作業(プログラミング)していた感じでした。大学院に行ってから,ようやく自分の研究の立ち位置というか,自分の研究がどんなふうに役立つのか少しずつ分かってきました。それと同時に,温度応力に伴うひび割れに興味を持つようになり,それ以降40年間温度ひび割れの研究を続けています。まだまだ分からないことがたくさんあるので,たぶん一生続けていくと思います。研究すればするほど面白くなるので,ゴールは見えないのですが,一生懸命ゴールを探しながら研究していることが楽しいのかもしれません。