法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

この橋の向こう(新入社員編(シールドトンネル見学))

 真理子は,最初のトンネル見学である都内のシールド現場の前日の夜,興奮しすぎて小学生の遠足の時のように中々寝付けませんでした。半分ボーっとしながら午前中の業務を済ませて,昼食もそこそこにシールド現場に向かいました。設計部からは地下鉄一本(途中私鉄と繋がっているので)で最寄り駅に行けます。そこで,バスに10分ほど乗って,シールド現場の工事事務所があるバス停で降りました。バス停から5分ほど歩くとクレーンが何本か立っているのが見えてきました(ここは,できるだけ遠くから撮り始めて,長回しで真理子の後ろ姿を追いながら,前方に現場が少しずつ見えてくる画が撮れればと思います)。2階建てのプレハブの工事事務所に到着しましたが,まだ約束の時間の1時間以上前だったので,現場近くを散策することにしました(季節としては6月なので,ブラブラするのにちょうどよいと思います。やはり,晴れの日の撮影が良いですね)。真理子自身,工事現場のイメージとしては,結構うるさくて埃っぽいというものでしたが,現場周辺は住宅街で凄く静かなのに驚きました。近くに川も流れていて,土手にいろいろな花々が咲いているのを見ていると,ここで工事が行われているなんて想像できないと真理子は思いました。まだお昼ちょっとすぎだったこともあって,人通りもまばらでした。道沿いのお店を見ながら時間も忘れて歩いている風景と,思わず時計を見て待ち合わせの時間ギリギリであるのに気が付いて,慌てて現場事務所に戻る画も撮りたいと思います(しっかり者の真理子の以外な一面というか天然ぶりを少し出したいところです)。

 工事事務所の前には,新巻が立っていました。“随分早く会社出たのに,何処で道草喰っていたんだ”と新巻にいわれました。真理子は,“すいません。早く着きすぎたので,この辺りをブラブラしてたら,待ち合わせの時間ギリギリになってしまいました。”と答えました。“工事現場の周囲は,結構うるさくて埃っぽいと思っていたのですが,とても静かで,クレーンや塀がなかったら,何処に工事現場があるのかわからないくらいでした。”と真理子はみてきたままのことを新巻に伝えました。新巻は,“現場周辺の方たちは,皆が皆工事を行っていることに賛成しているわけでもないし,普段の生活を乱されたくないと思っている方たちもたくさんいる。周辺住民への配慮は,並大抵ではないんだよ。特に,このような住宅街に隣接した場所での工事の場合は,人一倍気を使っているんだ。都市土木の場合,こういう現場が多いから騒音対策や粉塵対策などへの費用を結構かけているんだ。この現場もシールド立坑の上に建屋を建てて,騒音や粉塵が出ないようにしているんだ。それと,資材の搬入はラッシュ時を避けた昼間のみで,当然夜間の搬入はしていないんだ。現場の前の道路は,朝晩結構な交通量だし,一部スクールゾーンになっていて,小学生などが通学しているから,その時間帯は警備の人を増やしているよ。勝手に工事だけしているわけではないんだ。住民の方たちの理解があって初めて工事ができるんだ。それでもいろいろ苦情を言ってくる住民の方もいるけど,その苦情についてもちゃんと一つ一つ真摯に対応しているんだよ。そういうことをするのも建設会社の現場社員の務めなんだ。”と現場の事情を真理子に説明します。真理子は,そんな新巻の話を聞いて,私たちは技術を極めるだけでなくて,人とのコミュニケーションも磨いていかないと駄目なんだとあらためて認識しました。