法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

この橋の向こう(新入社員研修(シールドトンネル見学2))

 新巻と真理子は,工事事務所の2階に上がり,事務の女性に所長に取り次いでもらうようにお願いしました。事務所の奥の方に案内されながら,新巻は机に向かって仕事をしている次長や副所長に挨拶して回ります。新巻は,“うちの新入社員の瀬川真理子です。今研修中でうちのグループにいます。今日はお忙しい中お邪魔して申し訳ありません。仕事の邪魔にならないように見学させていただきます”と次長と副所長に挨拶します(事務所内はほとんどの所員が現場に出ていて,事務方と次長以上の幹部しかおらず,ガランとした事務所を写しながらの撮影がよいと思っています)。真理子は,新巻が挨拶している間,事務所内を見渡しますが,入口近くに事務の方がいるだけで,ほとんど出払っているのを見て,どこも昼は皆いないんだと思いました。事務所奥の所長室にノックして二人が入ると,奥の大きな机で画面を見ている飯田所長がいます。“よく来たね。まあ,そこに座ってくれ。”と飯田所長が来客用のソファを指さします。二人並んで座り,対面に飯田所長が座ります。すかさず事務の女性がコーヒーを持ってきます。二人の前にコーヒーを置き,所長の前には日本茶を置きます(飯田所長はコーヒー嫌いで,いつも日本茶を飲むという設定)。“こちらが新入社員の瀬川真理子です。”と新巻が言うと,“瀬川です。よろしくお願いいたします。まだ,研修中で名刺がありません。”と真理子が所長に挨拶します。“瀬川君,出身はどこだい”と所長に聞かれ,“宮城の気仙沼出身です。”と答えます(ちょっとこの場所が良いのか決め兼ねています。もともとこの話を学会誌に書いた時は,幼少時に阪神淡路大震災で被災した主人公という設定にしていました。その後東日本大震災があって,幼少期の体験をこちらに変更したので,あまり場所のことは考えていませんでした。行き当たりばったりになっています。ちなみにオープニングで東北のとある地方都市にしています。岩手県陸前高田か大船渡の方がインパクトあるかもしれません)。“そうか,私は震災復興で暫く大船渡に行っていたよ。大変な思いをしたんだね”と飯田所長が話されます。“まあ,今日は現場をゆっくり見て行ってくれ。新巻君と同期の吉田(女性)に同行させるよ”と言われ,“とりあえず,作業着に着替えてからだな。更衣室は事務の原田さんに聞いて”と言われます。持参した(新巻に,学生とは違うのだから,作業着は必ず持参することと事前に言われているという設定)作業着を持って更衣室に向かいます。安全帯,トラチョッキは現場のものを借りました(真理子は持参してきたのですが,現場のものを使うように言われたので,そちらを使うことにしました)。ヘルメットも持参したので,それは自分のものを使いました。出口で,長靴を借りて外に出ると,颯爽とした女性(吉田)が待っていました。一緒に出てきた新巻に“新巻君,忙しい?”と気軽に声をかけます。新巻が“貧乏暇なしといったところだよ。昨年から今年にかけて受注したのが2件あって,これから入札というのが4件あるよ。吉田もここにきて2年だろ,そろそろ設計に戻ってこないか。猫の手も借りたいくらいだよ”と言います。“何言ってるの。やっと仕事覚えて面白くなってきたところなんだから。まだ,1~2年はいるつもりよ。所長にもそう話しているから”と吉田は答えます。新巻が“吉田とは新入社員研修の時から一緒で,いつも比較されてたよ。出来の悪い俺と何でもそつなくこなすコイツとね”と笑いながら話します。“本当は,この現場俺が来る予定だったんだけど,所長の方針で女性技術者が欲しいと言われて,直前で吉田になったというわけ。最初は,悔しかったけど,その分しっかり設計の仕事覚えて,是非新巻をよこしてくれと言われるようになれ,とその時課長に言われたよ”とニコニコしながら話をします。真理子は,自分にもこんなライバルがいたらよいなと思います(二人の掛け合いを見ながら心の声でいうといったところです)。3人で立坑のある建屋の方に歩いていきます。