法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

この橋の向こう(新入社員編(シールドトンネル見学3))

 真理子と新巻と吉田の三人は,建屋の中に入ります。建屋内は大型の天井クレーンが2基あり,セグメントが山積みされていました。吉田が“搬入されたセグメントは,一旦ここに仮置きして,1リングずつ立坑に降ろしていくの。ここのシールドは,日本最大級だから,1リング13セグメントあるのよ。1つのセグメントの重さが大体10トンあるから,大型のトレーラでも2個しか運べない。だから,搬入も結構大変なんだ。搬入は昼間しかできないのに,シールドの掘削自体は昼夜行うから,セグメントのストック管理も結構重要になるわけ。セグメント自体も何種類かあって,一般部はRCセグメントを使用して,剛性の必要な個所にはRCと鋼製を組み合わせた合成セグメントを使うんだ。切欠き部など後で加工が必要な個所には鋼製セグメントを用いている。”と吉田が説明してくれる。真理子は,予習済みであったが,写真や図で見るのとは全く違った実際の部材に圧倒されていました。真理子が“この建屋に何リングストックできるんですか”と聞くと“14リング分はストックできるわ。1日に16~17m掘削するので,1日で大体10リング分くらい(セグメントの幅が1.6m)必要になってくるの。順調に掘進し始めたら,結構大変なんだ。”と吉田が答えてくれます。真理子はすかさず“それだけの掘削ズリはどこに運んでいるんですか”と訊ねます。“掘削ズリは一旦現場のヤード内に仮置きして,ダンプで東京湾などの埋め立て場所に運んでいるよ。所長か新巻君から聞いたかもしれないけれど,この現場は夜間のダンプの搬出ができないので,ある程度ヤード内にストックしておく必要があるんだ。”と答えてくれました。打てば響くような吉田の答えに真理子は舌を巻きました。吉田自体が何かキラキラして見えました。現場で働いているとこんなに輝けるんだとその時真理子は思います。私も早く現場で吉田さんみたいにバリバリ仕事したいと心の中で思います。

 “それじゃあ,エレベータに乗って,地下のシールドトンネル見に行きましょう”と言って,吉田は二人をエレベータの方に案内します。歩きながら,新巻が“最初のころは,何聞いてもわからないと答えていた吉田が,2年もいると見違えるようになったな。”と言うと,“そりゃあそうよ。この現場,見学者も多いから自然に覚えてしまったわ。門前の小僧何たらよ”と笑いながら答えます。エレベータで立坑を降りていき,シールドトンネルの入口に出ます。真理子は,想像していたよりも遥かに巨大なトンネルに圧倒されます。また,照明がなんとなく黄色いように感じました。“ここの照明,少し黄色くありませんか”と真理子が聞くと“いいところに気が付いたわね。少し黄色くしておいた方が気持ちは落ち着くらしいの。照明ぎらぎらだと,作業している人たちの気持ちもだんだん殺気立ってくるんだって。一日中穴倉生活しているわけだから,そんなところにも気を配っているのよ。”と吉田が答えてくれました。セグメントで覆われて,継ぎ目がとてもきれいに見えるトンネルがずっと先まで続いている情景に,真理子はまたまた圧倒されます。土木の現場ってこんなに巨大ですごいところなんだとあらためて感動した真理子でした。吉田が“それじゃあ,ちょっと歩くけどシールドマシンのところまで行ってみましょう”とトンネルの中を歩いていきます。