法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

この橋の向こう(新入社員編(シールドトンネル見学5))

 シールドマシン自体は,鋼製シールドで覆われた掘削部だけでなく,掘削したズリの搬出部や動力部などの車列を従えたものです。先端部は,まるで潜水艦の中のように所狭しといろいろな機械やパイプなどがあって,その中を縫うようにして入っていきました。セグメントを嵌め込むエレクタの動きを見ていると,どこかの工場にいるような錯覚を覚える真理子でした。階段を下りてセグメントが運ばれてくるところもみましたが,自動でセグメントを積んだ貨車が静かに先端部の方まできて,クレーンで卸して,それをエレクタが掴んで所定の位置に持っていくのです。セグメントを嵌め込む場所のジャッキが縮んで,そこにセグメントを挿入していくのです。真理子は,何時までもこの作業状況を見ていたいと思いました(真剣な眼差しで一連の作業を見守る三人の姿を映しながら,パーンしてセグメントの運搬状況や卸し,エレクタがセグメントを掴むところを写していきます)。吉田が“これ本当に見飽きないよね。私も何度見てもスゴイと思うもの。”と話します。新巻も“シールドトンネルの掘削システムはよく考えられているよな。もちろんここまで来るまでにいろいろな技術開発のための苦労もあったと思うよ。ここからは見れないけれど,シールドのテールの部分(お尻の部分)に刷毛みたいなのが付いていて,そこからシールド内に土砂や水が入らないようにしているんだ。さらに,テール部分から設置されたセグメントの背面に裏込め材を注入していくんだ。”と話しててくれます。真理子には,ちょっと想像できないものでした(イメージがわかない顔をしていると,新巻が持っていた技術資料で図を見せながら説明していく画を撮りたいと思います)。

 次に少し後方の制御室に移動します。真理子は,名残惜しそうに何度も振り返って先端部を見つめます(ここの表情もうまく画にできたらと思います)。制御室は,壁一面に多くのモニターが並んでいて,トンネル断面の画像や各所を写したもの,数値が羅列したものなど,まるでSF映画の宇宙船のブリッジのようだと真理子は思いました。吉田は“ここでマシンの制御しているんだけど,地上の事務所の近くに中央制御室があって,そちらからでもマシンの制御や監視ができるようになっているの。”と話ます。“シールドの場合,切羽の部分が見えないから,掘削面の地質の変化など常に気を付けていないといけないのよ。特に,大きな礫が含まれていると,ビッドに損傷与えたり,排土が難しくなったりするから,その時はオペレータもピリピリしているわよ。地質図はあるけど,埋設物までちゃんと記載されているわけじゃないから,結構いろいろなものも出てくる時があるのよ。”と吉田が説明します。新巻が“今掘っているところは,上に河川や海がないからいいけど,河川や海の時は,水が掘削先端に流入したら,大変なことになるんだ。もちろん先端部分は圧気しているけど,水の力は計り知れないものがあるよ。設計で大変なのはそのあたりなんだよ。セグメントの厚さにしても,掘削土量を少なくしたいのであれば,厚さをできるだけ薄くしたほうがよいわけだけど,それは,不確定要素に対する安全率を削ることになる。経済的なところばかり追求していくと思わぬところで足をすくわれるんだ。自然の力を侮ってはいけないよ。設計をするものにとって,そこはとても重要なんだ。効率化や経済性を追求することは当然必要だし,これからもどんどん進めていかなきゃ仕事が取れなくなる。一方で,施工においては,安全が第一なんだ。設計もその点を十分配慮しなくちゃいけない。リスクマネジメントも設計にとって大事であることを知っておいて欲しい。”と言われました。真理子は,シールド工法が確立されたものだとばかり思っていたのですが,実はまだまだ分からないところや技術開発できるところがたくさんあることを教えられたように思いました。