法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

インフラ系企業?

最初なので,少し真面目な話を書きたいと思います。

これからは,趣味の話,気になったことなどを不定期に書きたいと思います。

 

 当大学院の研究科では,筆記試験と口述試験を行う一般入試と成績上位者に対して口述試験のみを行う推薦入試があります。さらに,数年前から成績優秀者の上位者(上位1/4程度)に対しては,書類審査のみの特別推薦入試も行っています。口述試験は,専攻全員の教員で受験者一人ずつ行っています。質問内容は,大学院への進学の動機や大学院修了後の進路などです。ある時,受験者(学内)に修了後の進路について質問したところ,何人かの学生から,“インフラ系の企業に行きたい”という発言がありました。インフラ系の企業?どんな職種か最初ピンときませんでした。思わず“インフラ系の企業というのは何か。土木の分野では,ほとんどの業種がインフラに関わっている。インフラの意味が分かっているのか”と言い返してしまいました(聞かれた学生はかなり動揺した様子でした)。すると,隣の先生から“彼らは,鉄道や道路の会社のことを言っているんですよ。”と耳打ちされました。大学院に進学しようという学生がこの程度の意識しか持っていないことに驚くとともに,学生にとってインフラは鉄道と道路しかないのかと思い,愕然としてしまいました。彼らにとって,上下水道,電気,ガスといったライフラインはインフラではないのかと思わず天を仰いでしまいしました。確かに昨今の学生は,やたらJRや私鉄などの鉄道事業の会社やNEXCO,首都高などの道路事業の会社に行きたがるのは確かです。私自身何がそんなに良いのか分からないのですが,大学院に進学予定ですと言っていた学生が,鉄道会社から内定をもらうと,手のひらを返したように就職しますと言ってくるのを目の当たりでみると,彼らにとっては高いランキングの企業体なのでしょう。だからと言って,インフラ系の企業=鉄道,道路というのは,あまりに短絡過ぎるし,思慮がなさすぎるといわざるを得ません。ただし,あらためて考えてみると,インフラストラクチャーという言葉自体,我々も結構適当に使用しているところがあって,かなり曖昧模糊としていることも事実です。

 今,学生は売り手市場であり,手を挙げればいままで先輩たちがなかなか行けなかった企業にもすんなり行けてしまうのは確かです。以下の文章は,大学院生向けに書いた原稿の一部です。今後,さらに働き方改革が進めば,高いスキルを持った有能な人材と今まで楽をしてきて大したスキルもない人材では,大きな格差が生まれてくると思います。一昨年パリに半年ほど居ましたが,ヨーロッパではこの仕事に対する格差は非常に明確で,日本などはまだまだビジネスに対して甘い社会だということを痛切に感じました。大学院への進学は,スキルアップのための時間と私自身は思っています。何でもかんでも就職するのではなく,自分に向いている仕事は何なのかゆっくり考えるのも大事だと思っています。

働き方改革関連法が施行されてちょうど1年が経過します。これまで日本人は,勤勉でよく働く国民であると諸外国から言われる一方で,年がら年中働いているワーカホリック(Workaholic:仕事中毒)だと揶揄されることもありました。今から30年以上前,テレビの栄養ドリンクのCMでは”24時間働けますか?” というキャッチフレーズがあったほどです。企業戦士などともいわれ,時間を惜しんで働くことが美徳とされていました。その一方で,過剰労働による過労死やサービス残業パワハラなどのブラック企業が横行していたのも事実です。そのような中,2015年に広告最大手の会社で過剰労働による自殺が大きな社会問題となり,この事件がきっかけとなって,2018年6月に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法) 」が可決・成立し, 翌年の4月から施行されました。これによって,多くの働く人たちのワークバランスが見直されるようになったのです。

これまでは,ある仕事をある期限までに仕上げるために,勤務時間内だけでは収まらない分を多くの残業時間を費やして行っていたのですが,今は働き方改革によって仕事にかけるマンパワー(総時間数もしくは人工)の制限が加わることになったのです。そのため,仕事の効率化,省力化を推進し,無駄をなくす努力が図られるようになりました。一見すると素晴らしい働き方のように見えますが,社会にとってこのような仕事のやり方を行っていくためには,高いスキルを持った人材が多く必要になってきます。仕事の要領が悪く,時間ばかりかかる人材は極論をいえばいらないことになります。また,単純労働は自動化やロボット化が進むでしょうから,スキルを持つ人と持たない人の差別化がより一層明確になっていくことになります。

 では,どのように高いスキルを身に着けていくのかということになります。これまでは,社会に出て,企業などの研修やOJT(On the Job Training)のような仕事をしながらスキルアップしていく方法が採られてきましたが,今は企業などにその余裕もなく,自らスキルアップ(自己研鑽)していく必要があります。他方,大学の4年間で十分なスキルを持つことが可能かといえば,基礎知識の習得程度しかできず,とても高いスキルを持った人材の育成にまでは至っていません。”

 第1回目は,とても硬い話ですので読み飛ばしていただいて結構です。

 次回は,映画の話を書いてみたいと思います。