法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

目先のことしか考えない輩

前回のブログで書きました西岡常一氏とは全く対照的な考え方を持った輩の話を今日はします。身に覚えのある人が何人かいると思います。その輩とは,目先のお金,目先の仕事しか頭になく,他人のこと,ましてや将来のことなど眼中になく,自分のことしか考えていない思考の持ち主のことです。若い時は,得てしてそういう輩になってしまう(ダークサイドに陥ったようなもの)ことが多いと思います。

矢口監督作品に“ウッジョブ”というのがあります(三浦しをん原作,2013年作品)。林業を題材とした映画で,受験に失敗した主人公(染谷将太)が,たまたま見た林業のパンフレット(表紙に長澤まさみが映っている)のモデルに会いたいがために,携帯も届かない山奥に1年間の研修に向かう話です。その中で切り出された木材が高額で売れたのをみて,“社長が持っている山の木を全部売ったら大金持ちになるじゃないですか。どうして切り出さないのですか”ということを研修先の社長に尋ねるシーンがあります。これに対して,社長が“この山の木は,祖父が植えた苗が百年近くなってようやく商品になったのだ。今,全部切ってしまったら,自分たちの子孫たちはどうなる”と嗜めるのです。また,別の場面で伐採した場所にひたすら苗木を植えるシーンがあり,主人公は“木を切る仕事にきているのに,どうして来る日も来る日も苗木を植えることばかりするんですか”と先輩に聞くと,頭を叩かれながら,“俺たちの孫子の代になって,伐採する木がなくなったらどうするのか”とどやされるのです。今の都会育ちの若者たちの短絡的なというか近視眼的な考え方の一端を表現していると思いますが,これは映画の中だけのことではないと思っています。ここまで極端でないにしても大学にも似たような学生はいます。

 

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ウッジョブ

 

彼らは,怒るとまず言い訳をし,その後は分が悪いとなると私や親などに責任転嫁をして,自分に非はないと訴え,それでもお前が悪いというと,最後は逆切れされることがしばしばあります。さらに,授業評価アンケートなるものには,死ねだの自己満足の授業するなだのキモいなどと平気で書いてきます(最近は,名前を記入するようになってなくなりました)。こういう輩は,総じて授業態度が悪い。遅刻は当然で,必ずと言ってよいほど遅延証明書(電車などが遅れた場合に,鉄道会社が改札に置いておく紙で,東京などは乗客数が非常に多いのでいちいち駅員が配ることなく,改札近くの箱にたくさん置いてある)を持ってきます。それもほぼ毎回です。遅れてきてどうするかと思えば,速攻で寝てしまいます。授業を聞いていて眠くなるとかそういうものでなく,寝るために大学に来ているようなのです。そのくせ,休み時間では廊下などで仲間と思われる連中と大声でしゃべり,何故か共通しているのだが,バカ笑いするのです。それでいて,欠席回数や遅刻の回数を気にし,講義中にプロジェクタに映した資料を必要に欲しがるのです。当然,寝ているか起きていてもノート一つ出さないで,ボーっと聞いているのですから,頭に入るはずがありません。期末試験は当然できていないのに,しょっちゅう研究室にきて,結果を聞こうとします。もちろん,一部の学生ではあるのですが,ここ数年どんどん増えているような気がします。ゆとり世代(もう終わっていると思いますが)と一口で言ってしまえば簡単なのですが,学生の質自体が我々の頃と大きく違っているような気がします。このような学生たちを毎年排出し,建設業や役所に送り込んでいるのですから,時々自己嫌悪に陥ってしまう時があります。

卒業研究の私との打合せよりも,バイトのシフトを優先する学生も以前いました。実験などで作業が残っていても,バイトがあるといって帰ってしまう学生もいました。卒業研究の中間報告で,自分の発表が終わるとさっさとバイトにいってしまうという学生もいました。それを咎めると,“店長に怒られるし,バイト仲間から口をきいてもらえなくなる。勝手に休むと,シフトの変更などしてくれなくなる”といって,悪びれもなく帰ってしまうのです。学生の本分は何ぞやといっても,先生には関係ないことです。自分の人生なので,自分で決めますとわかったようなわからないことを言い返してきます。誰がお前の授業料を払っているのか。親御さんが大変な思いをして出しているのでないかと思いますが,彼らには全くそんなこと関係ないと思っています。こんな彼らが前述したように,建設業や公務員になっていくのです。彼らに国民の血税で作られるインフラを任せていいものかと本気で考えてしまいます。

 もちろんこんな学生ばかりがいるわけではありません。私の研究室の卒業生に,親御さんの事情で授業料が払えなくなって,除籍となってしまった学生がいました。ただし,彼はあきらめることなく,なんとか復学したいと私のところに相談に来ました。それならば,1年間働いて,自分で授業料を稼いできて,それを基に復学したらよいという話をしました。どんな業種で働きたいか聞いたとき,できたら建設業にかかわる仕事をしたいといったので,私の知り合いのところを紹介して,そこで務めることとなりました。1年間死に物狂いで働いたようで,いよいよ復学するときになって,紹介先の会社の社長から辞めさせないでくれと言われたほどでした。自分で汗水かいて稼いだ金で,学費を払ったので,他の学生と違って非常に熱心に卒業研究に取り組んでいました。どうしようもない学生とは真反対で,骨のある学生(社会人の雰囲気が漂っていましたが)に育ってくれたと嬉しく思った次第です。