法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

コンクリート工学の言語は宇宙語?

昨日,研究室を巣立っていく学生たちに酒宴の場を設けてもらいました(謝恩会がなくなったので,研究室でささやかなお祝い会を催してくれたのです)。その時に,私のコンクリート工学の講義は非常に難しかったという話が出ましたので,少しそのあたりのことを書きたいと思います。

コンクリート工学は2年生の科目で,まだ専門科目の授業が少ない春学期にあります。学生は,この講義でコンクリート構造物の耐久性に関する話や配合設計に関する説明を聞くことになるのですが,大半の学生は寝ているか,ぽかんと聞いているかしています。研究室に配属された学生に,以前講義の内容は理解できているかと聞くと,最初に聞いたときは先生が宇宙語か呪文を唱えているようにしか見えず,全く理解できませんでしたと言っていました。なかなか言い得て妙かもしれません。素人に話をするときは,物事を理解してもらうために如何に噛み砕いてというか平易な表現で説明することが重要であるかを感じた次第です。今でも,専門用語を駆使して話をする人が,医者だけでなく,各分野には必ずいます。最近ではIT関係の人と話をすると,頭文字をとった略語と全く知らない専門用語の羅列で話されることがありますが,こちらはどうリアクションしてよいかわからない時があります。自分が普段仲間内で使用している言葉なのでしょうが,相手も当然知っていると思って使ってしまっています。そうなのです,少し分野が違うだけでチンプンカンプンとなってしまうのです。

以前,新しく研究室に入ってくる学生に,卒業研究のテーマ内容について私がイメージしていることを簡単に説明したのですが,“先生,何を言っているのか全く分かりません”と大半の学生がいったのには,正直驚いたことがありました。もちろん,一部専門的な用語での説明も加えましたが,大半はこれまで講義などで話してきた内容であったのにもかかわらずです。確かに,彼らにとっては研究室に入るまで私の講義など進級・卒業するための単位取得の一つとしてしか思っていないのでしょうから,これから一年間,こんな研究テーマを考えているといっても,ほとんど素人に話をしたのと変わらなかったのかもしれません。まだこれから研究室に入ってくる学生ならば,こんなこともあるかもしれないとは思うのですが,卒業間際のまとめの時期になって,突然私の所にきて,“先生,今までやってきた実験と解析どのようにまとめたらよいかわかりません。教えてください”と言われた時には,唖然としてしまったことがありました。この学生は,一年間何も考えずに卒業研究をしていたのかと思うと開いた口が塞がりませんでした。当然,何度も中間報告や学部生のミーティングをしていたにも関わらずです。実験や解析では,言われたままのことをしていればとりあえず結果は得られます。しかしながら,研究はその結果を基にどのように考察し,どのように結論付けていくかが重要なのですが,全くそれができないということは,研究室に来た時とほとんど進歩していないことと同じと思うしかありませんでした。

最近,本当にこんな学生が増えているのです。そして,彼らの何人かは公務員や事業者になっていくのです。

 一方,世の専門家や有識者といわれる人たちが話す内容に対して,多くの人(その分野に全く精通していない一般の人たち)は専門家がいっているのだからそうなのだろうと鵜呑みにしてしまいがちです。同業者から見たら,それは絶対におかしいということでも,多くの人たちは納得してしまっていることが結構あるのです。一方,違った思い込みをすることもよくあります。噂がいつの間にか真実のように語られて,世間の意見となってしまう場合もあります。その場合は,いくら専門家が述べてもそんなものは学者の屁理屈だとなってしまうことだってあります。群集心理なのかもしれませんが,誤った方向に走り出したものを止めるのは並大抵ではないと思います。昨今の新型コロナウィルスでもこのような状況がいろいろな場面で起こっているように思います。噂が噂を呼ぶような事態が起こっているのも事実です。冷静になって物事が観れなくなってしまわないように我々ひとりひとりが気を付けなければなりません。