法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

カッコ良い現場マンになるための必須条件

今日は,これから社会に出ていく人たちに贐の言葉(になっているかどうかわかりませんが)として,カッコよい現場マンになるための話を少し書きたいと思います。

建設会社の現場マンとしてカッコよいのは,決断が速いことと誤った判断を下さないことだといわれたことがあります。例えば,2000m3のコンクリートの打込みを行う工事があったとして,それを一日でかつ近隣の住民対策もあって18時までに終了させなければならなかったとします。できる現場マンは,まず生コンの数量と打込み速度と打上り高さが頭の中に入っていて,さらに生コンのドラムの中の残量,ポンプ車の中の残量,配管の中の残量まで頭の中に入れています。だから,コンクリートの注文も先を見越して行えるのです。施工中は特に問題ない(実はこの段階でもかなり綿密に検討していないと駄目なのですが)が,最後の生コン車数台となった時に,何台(何m3)注文するかをできる現場マンは即座に判断して生コン工場に連絡をすることができるのです。そうすると,生コン屋さんも洗いができる(仕舞ができる)し,トラックアジテータの待機も最小限で済ませられ,運転手も残業しないで済むことになります。結果として,当初計画していた18時までに終了することもでき,近隣住民からクレームが来ることもないのです。実際に,戻しコン(注文したコンクリートが余って生コン屋に引き取ってもらう残コン)もなく,ピタッと終わらせた時はその現場マンはきっと周囲にオーラを放ちながら輝いて見えるのではないでしょうか。そのような離れ業ができるのは,綿密な計算と現場の状況や作業員の働きぶりもしっかりわかっていて,当てずっぽうに行っているわけではないからなのです。

これがカッコ悪い現場マンの場合,自分がどんな作業をするのかも把握できておらず,ましてや施工中の現場のどこに注意しなければならないのかも分からず,ただ漫然と立っているだけで,得てして残りの数量の把握もできていないのです。だから,残りが少なくなっても,生コンの調整もできず,足りなくなるのが心配で生コン屋を長く待たせ,トラックアジテータも待機させたままとしてしまうことになります。さらに,余らせたらその分赤字となるので,少しずつしか注文できず,結局予定時間を大幅に超過してしまい,近隣住民からもクレームが来てしまうのです。要領が悪く,優柔不断と言ってしまえばそれまでなのですが,これが人の生き死にや事故につながるかどうかの瞬間であれば,このような現場マンであったら大変な事態を招くであろうことは察しが付くと思います。カッコ良い悪いの前に,このような現場マンに現場を任せておけなくなってしまいます。建設現場では,常に危険と隣り合わせなので,一つの判断ミスや躊躇が大事故を招いてしまいます。もちろん,上述したようなカッコ良い現場マンにすぐなれるわけではもちろんありません。先輩たちの行動等を見ながら,自分だったらどうするのか常に考えているようにして,学んでいくしかないのです。誰かに教えられてできるものではないので,自分でどうやったらそれらを吸収していくのか意識していないとできないと思います。昨今の指示待ち人間や “ユルミ世代”にできればよいのですが,前途多難と言わざるをえません。別に,建設業に限ったことではなく,できる人間とできない人間の差は,こんなところからついてくるような気がします。どんなことでも前向きで,意識を持った人間であれば,上述したようなことは簡単にこなしてしまうと思います。