法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

土木学会誌って何?

 前回書いたように,土木学会誌のCEレポートという企画で,2006年9月号に掲載された“土木学会誌って何? -単位のない科目「都市環境デザイン入門」-”についてその内容を紹介したいと思います。全文を読みたい人は,土木学会誌のバックナンバーを検索して読んでください(ここには,抜粋を載せます)。

 学会誌に掲載した内容は,1年生科目で2004年度から開設した“都市環境デザイン入門”という授業についてです。昨日も書いたように,単位のない科目で他大学では“土木工学概論”のような授業に相当します。

 私も学生時代,1年生の後半の時に“土木工学概論”という授業があり,土木工学科の全教員が一回ずつ自分の専門の分野や研究について講義するものでした。専門的な内容など全くわからない学生が聞くのですから,皆さんが想像する通り半分以上の学生が寝ていました(今とあまり変わらない状況です)。ただし,何回目かの講義で構造力学が専門のN教授の授業は,全員が背筋伸ばして誰も寝ないで話を最後まで聞いていました(最初は寝ていたのもいたのですが)。土木工学科では超有名な先生で,構造力学の講義の時は授業開始のチャイムが鳴ると(当時は8時30分授業開始でした),教室のドアをロックして,遅刻は一切認めませんでした。授業中もしょっちゅう学生を指名して,答えられないと頭を叩かれて,そのまま立たされました。当然,寝ているような学生は即頭を叩かれるので,誰も寝るなんてことはしませんでした。合格率は大体1回目が4割程度,2回,3回受けるのが当たり前という講義でした(当然必修科目です)。別に,私はN教授のマネをしているつもりはないのですが,最低限ちゃんとわかってもらうためには,このような合格率になってしまうような気がします。

 実は,土木工学概論で私たちは最初の洗礼を受けることになったのです(まだ構造力学の講義の前ですから)。午後の授業でしたので,ドアの鍵をロックすることはありませんでしたが,講義の途中で寝ている学生のところに行って,確か首にセーターを巻き付けていたと思いますが,いきなりその巻いていたセーターで首を絞めつけたのです。寝ていた学生は当然飛び起きて,何をするのかという顔でN教授を睨め付けるなり“誰が寝てよいといったのか!”と凄い大声でどやしつけられたものですから(我々からすればおじいさんなのですが,その迫力たるや凄いものでした),寝ていた学生の方がビビッて小さい声で“すいません”と謝ったのですが,“今度寝ていたら,教室から叩き出すぞ”と言われ,授業の最後までそのまま小さくなっていました。これを見て,あの先生だけは逆らえないと思いました。

 話が逸れてしまいましたので,都市環境デザイン入門の方に話を戻します。私の担当分の時に,コンクリート研究室のOGであるW女史と元土木学会誌の学生委員だった東工大の博士課程のO女史に来ていただいて,W女史からは土木学会というのはどういう組織でどんなことをしているのか,土木学会誌がどのようにして作られているのかを話していただき,O女史からは土木学会での学生会員の割合や、学生会員の特典などについて話をしていただきました。受講者はたったの11名でした(当初60名くらいいたのですが,どんどん減っていって最後に残った受講者たちです)。

 以下に記事の内容を少し載せたいと思います。

“当学科は,2004年度学科創立から続いていた「土木工学科」の名称から「都市環境デザイン工学科」へ名称変更を行った。「土木」という名前が大学からどんどん消えていく中での変更であった。名称変更後は,偏差値も上がり,女子学生の数も増加した一方で,入学した学生からは,“何をする学科か分からない”,“土木とデザインの関係が分からない”といった意見があった。当学科では,入学時のガイダンスなどで説明を行ってきたが,それだけでは不十分であることを痛感した。そこで,もっと学生に当学科のことを理解してもらうとともに,土木の魅力を伝えていく必要があるとして,「都市環境テデザイン入門」という導入科目を設けることとした。他大学でも「土木工学概論」といった導入科目があり,学科内の先生が持ち回りで自分達の学科がどんなことをするのか講義するスタイルのものがある。当初は,「都市環境テデザイン入門」という科目もそのような形式で行うことを考えたが,もっと自由な形で行ってはどうかとの意見が出され,履修相談や卒業後の進路,修士の学生の体験談,外部から講師を招いて土木の魅力を伝える講義など先生方が必要と思うことや,こんなことを話したら土木に興味を持ってくれると思うことを出し合って授業計画を立案し,本年度から試行的に行うこととした。「都市環境テデザイン入門」は枠に捉われない科目とすることと,学生の自主性を重んじることも考慮して,敢えて単位のない科目とした(当然,担当する先生はボランティアとなる)。

 担当する先生は1年生担当の3人の教員で,第1回~3回は上述したように履修相談や修士の学生数人にどうして大学院を選んだのか,どのような進路をめざしているのか等を話してもらった。第4回以降は,3人の先生の持ち回りで土木に興味を持ってもらうような内容をそれぞれ考えながら行うことにした。

 今の学生の多くは,単位取得に関して非常にクールであり,選択科目では自分が卒業研究で行う研究分野などお構いなく,単位が容易に取れる科目でそれも最低限しか取らないという省エネタイプである。自分が師事する教授の講義を取らないで平気でいる学生も増えている。そのような学生気質の中で,単位のない本科目は受講者なしということも想定していた。確かに1回目の授業では1年在学生82人のうち60名以上が受講したが,その後は減少する一方で,第3回終了時点で10数名まで減っていた。

 このような状況の中で,担当教員の一人である自分が授業で学生達にどのようなことを話せば,土木に興味をもってくれるのかを考えた。思いついたのは,土木学会という未知の存在とそこから毎月会誌が発刊されており,その編集に学生が携わっていることについて話をすれば少しは土木に興味を持ってくれるのではないかと思った。そこで,元編集委員で当学科(土木工学科)卒業のWさんと元学生委員であったOさんに来てもらい,学会誌がどのようにできるのかや,学生の目から見た学会誌とその編集に携わってみてどうであったかについて話をしてもらうこととした。“

 講義の後,学生に簡単なアンケートをとってみました(当然,皆寝ないで真剣に話を聞いていました)。とても面白かったという意見が大半でしたが,残念ながら土木学会誌の学生委員になりたいという学生はいませんでした。

 今,私の研究室にいる大学院1年生の藤原さんは,土木学会誌の学生委員になりたいと学部3年生の時に,F先生のところに相談に行き,ちょうど私が土木学会誌の特別委員であったので,話を聞いて土木学会に推薦しました。すごいバイタリティのある学生で,我が研究室のチャーリーズエンジェルの一人です。皆さんも是非藤原さんが担当した記事を読んでみてください。

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都市環境デザイン入門の受講者たち,下段右端がO女史,二段目左端がW女史