法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

受験生の大学選び

 今日は,昨日の続きで某大手予備校のK社でのインタビューの抜粋です。それにしても,T氏の話は一つ一つ思わず頷いてしまうことばかりでした。

 

 T氏に土木工学科と他の学科を比較した時,偏差値や受験生の男女比などに違いがあるかどうかお聞きしたところ,工学系は全体的に学力が下がっていますが,なかでも土木は下位のレベルだと言われました(分かってはいましたが,正面切って言われるとやはりショックでした)。K社での模擬試験を複数回以上受けた生徒の平均偏差値で見た場合,国公立大の工学系の合格者においては機械や生命系が高く,土木は下位の方になるそうです(私の頃(20年以上前)は結構人気がまだあったのですが)。特に,建築と土木と両方あるような大学では,それが顕著に表れているとのことでした。単純に言って,両方あるところは建築の偏差値が高く,土木が低いということです。

 私立大学の場合は,国公立と違って合格者がそのまま入学者とならない(多くが本命でなくすべり止めとして受験しています)ので,さらに偏差値のレベルが下がることになります。地域的には地方よりも都市部の方が土木の人気は低いようです(何故かはわかりませんが,シティーボーイはダサい土木には行きたくないということなのでしょうと言われました。土木=ダサい学科というレッテルを貼られていること自体ショックでした。また,予備校もそんな風に見ているのだなということもショックでした)。受験生は,何をやりたいかが最優先ではなく,優先順位としてはブランド(大学名)と偏差値(自分の学力に見合ったレベルの大学で学部,学科は関係ない)と立地(場所,特に都心にあるかどうかが重要)の3つだと言われてました。

 工学系受験者の女子・浪人比率では,国公立の場合,土木が他の学科に比べ,女性比率が高いかどうかは一概には言えませんが,浪人比率は比較的低い傾向にあると言われました。それは,1年浪人し,学力が向上したのなら,もっと上を目指す(土木以外のもっと人気のある学部や学科)ということだと言われました。ここまで言われると,土木いらないのではないかとさえ思ってしまうくらいでした。聞いていて,もうやめてくれという心の叫びと現実を直視してどのようにして打開していくのか聞き出せという声が頭の中でヘビロテしていました。

 今回の土木学会誌の特集の趣旨の一つである子供の大学選びに対する親の干渉(意見)について聞いてみました。T氏に保護者の目から見た土木の印象について尋ねたところ,親御さんの高等教育への進学率は以前に比べて上がっており,親が高学歴になっている割合が昔に比べ高く,多くの親が大学の受験を経験しているので,昔のように例えば高校の進路指導の先生や予備校の先生に大学選びを一任することはなくなってきていると言われました。むしろ,この子の学力からするとこの大学に行けるのではないかなどと物申す親が多く,進路指導の先生や予備校の先生と対等の立場かそれ以上で話をすることが多いと言われました。つまり,親が子供の大学選びに対して高い意識を持っていて,進路指導の先生や予備校の先生が少しでも変なことを言おうものならば,自分の意見というか主張を前面に押し出してくる傾向にありますと言われました。

 では,物申す親として,父親と母親に違いはありますかとお聞きしたところ,発言力が大きいのはやはり母親の方ですと言われました(やっぱりそうですよねと思わず相槌を打ってしまいました)。母親の多くは,文系や薬学・医療系の出身者が多いことから,理系,特に技術系のことはあまりというか全然わかっていない人がほとんどだと言われました。当然ですが,受験生の土木志望に対して母親の学歴が影響していると思いますと言われました。もちろん,ほとんどの場合学科は本人が決めるようですが,高校の先生や予備校の先生が言われることに対して,最終的には本人の意志よりも母親の意見でほとんど決まってしまうようです。一方,父親は基本的に「お前のやりたいことをやれ」という意見が大半のようです。本人は自分で決めたと言いますが,顕在化されていないだけで,潜在的には母親の意見が大いに影響しているのではないでしょうかと言われました。

 明日は,このような受験状況(土木志望が少ないことなど)を打破する方策について書きたいと思います。