法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

これから土木技術者を目指す若者はいるのか?

 今の高校生の中で土木を目指したいと思っているのはどれくらいいるのでしょうか。先日“週刊ダイヤモンド”のインタビュー記事について書きましたが,21世紀に入った頃の当学科はもっと深刻な状況でした。私が大学に赴任したころ(2001年当時)は理系離れが進み,当学科の偏差値も年々下がっていって,土木工学科から都市環境デザイン工学科に名称変更する前は,偏差値が50を下回るギリギリのところまできていました。偏差値が50を切ると,偏差値で30代の学生が入ってくることになり,算数もまともにできない学生(数学ではなく,小学校の算数(分数計算等)もできないような学生)を教えることになり,大学自体の授業が崩壊しかねないところまできていたのです。そうなると,当然就職も落ち込むことになり,バブルが崩壊して就職氷河期に突入した時期と重なっていたこともあり,当学科自体がなくなるのではという危機感が学科内に漂っていました(意に介さない先生もいらっしゃいましたが)。したがって,学科の危急存亡の危機を乗り越える必要があったことから,その打開策の一つして学科名称の変更を行うこととし,2004年に土木工学科から都市環境デザイン工学科に学科の名称変更を行いました(結構反対する先生もいらっしゃいました)。このような学科の名称変更は,当大学に限ったことではなく,他大学でも学部の改変や改組が行われていた時期であり,その時流に乗ったところはありました(土木学会でも学会名称の変更が真剣に議論された時期でもあります)。その後の都心展開(小金井から市ヶ谷に移る)も当学科の起死回生の策のひとつであったのです。当初は,小金井に残るか学科の一部が市ヶ谷に行くかなどいろいろ議論し,市ヶ谷に行くことになったのです(本当はいろいろあったのですが,関係した方もまだ残っていらっしゃるので,詳細は書かないことにします)。

 学科の名称変更によって,偏差値は上向きになり,特に女子学生の数が増えたのには驚きました。一方で,入学してきた学生に名前に騙されたとか,イメージしていた学科とは違うなどと言われました。オープンキャンパスや高校生などに配布するパンフレット,入学時でのガイダンスなどでも元々は土木であることを強調していたにも関わらずです。大半の高校生にとって,大学を選ぶ基準は名前と偏差値であって,そこで何を学ぶとかどんな教授陣がいるとか,将来目指すものは何かなど考えていないで決めているのだと思いました。そこで,土木学会誌の特集で主査を任されたときに,先日書いたように土木を目指す学生は今どれくらいいるものなのか知りたいと思いました。そのためには,大学の偏差値を決めている大手予備校に今の実態(2007年同じ)を少しでも教えてもらえればと思い,名の有る大手予備校何社かに依頼をしたところ,某K社からインタビューに応じてもよいとの返事をいただき,早速取材に出かけました。取材の内容については,次回以降に書きたいと思います。それにしても,大学のランクが実は予備校で決まっているというのは何か釈然としない思いでいます。ある意味,高校生(浪人生)の学力と希望する大学との関係について,莫大なデータを持っているのは予備校なのですから仕方ないのかもしれません。高校であっても自分のところしかデータはないわけで,全国レベルでの比較などはできないわけです。大学は,入ってきた学生の実力はある程度把握できるものの,他大学との比較は当然同じ尺度を持っているわけではないので,非常に難しいのも事実です。

 皆さんがどのようにして大学を選んだか一度自分自身に問うてみてください。凄い信念を持って選んでいる人は何人くらいいるのか私自身知りたいところです。