法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

お母さん,あなたの子供を土木技術者にしたいですか?

 土木学会誌での初めての特集号の主査(後にも先にもこの1回だけでした)を任されて,以前から考えていた“お母さん,あなたの子供を土木技術者にしたいですか?”にしたいと思い,企画書を作成しました。今,大学を選ぶのは,保護者(主にお母さん),学校の進路指導の先生,予備校の先生と言われています。特に,母親の意向が強く反映されるといわれているので,そのあたりをいくつかの角度から見てみたいと思い,委員会に提案したところ,女性の委員から“進路については,当然お父さんの声もあるので,お母さんに限定するのはおかしい”といわれ,実態はお母さんの意見が強いのではと反論したのですが,結局特集のタイトルとして“あなたの子供を土木技術者にしたいですか,お父さん,お母さん?”となりました。私としては,不本意だったのですが,編集委員会での決定なので,致し方ありませんでした。

 特集の趣旨としては,“日本において,尊敬できる職業の上位には,常に医者,弁護士などが挙げられるが,土木技術者が挙げられたことは見たことがない。社会基盤の整備等,社会への貢献度は高い職業であるにも関わらず,認知度が低い。ともすれば3Kの代表のようにいわれ,談合など悪徳業者の代表格のように言われる。また,何か事件を起こせば土木作業員(土木技術者ではない)と報道され,土木と名がつくと世間では忌み嫌われるものの一つのようになっている。何故,そうなっているのかと考えた時,土木という職業が正しく認識されていないことが挙げられる。当然,正しく認識されていなければ,我子をそんな職業に就かせたくないと思うのは親の心理である。現在,子供の大学進学において,学科などの選定に大きく関わっているのは,進学塾の進路指導の方と母親であると言われている。このことも踏まえ,今回の特集では,世のお母さん(お父さん)にターゲットを絞って,土木技術者に対する現状認識についてとりまとめていき,土木技術者の社会的地位向上のために何をすべきかの一助にしていきたい。”としました。

 学生に話を聞いても,大体企画趣旨のようなことを述べているので,その実態を知りたいと思い,大学の入口(予備校へのインタビュー),出口(経済雑誌へのインタビュー),海外の状況などを軸にまとめていくことにしました。特集のなかには,実際に大学で土木を専攻している学生と親御さんに来てもらい,親子対談を行ったり,土木技術者(主に編集委員)のお子さんに,お父さんやお母さんの職業をどう思っているのか簡単にコラムのような形式で書いてもらったり,妻からみた夫の職業についてコラムを書いてもらったりする企画を入れました。

 親の背中を見て,自分の進路(土木の道)を決めている人も案外いるのではないかという淡い期待を抱いていたのも事実です。この特集で,現代社会の土木の地位というか認知度がある程度見えてくるのではないかと思っていました。また,現状認知度が低いのも事実ですので,違う分野の方に土木のどういうところを変えていけば認知度が上がるのかも知りたいと思っていました。実際に特集に取り組んだ内容は,次回以降に書きたいと思います。