法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

沖ノ鳥島(続き)

 沖ノ鳥島の海中部に使用する特殊水中コンクリートの試験練りを,To建設の技術研究所で行った際,練り上がったコンクリートが分離した粘性のないものになってしまいました。最初,特殊水中コンクリート用の混和剤を入れ忘れたのかと思ったほどでした。確かにカラ練り時に投入しましたので,混和剤が古くて効果が出ないのかとも思いました。しかし,いままで古くて効果が出ないようなことはなかったので,原因がさっぱり分かりませんでした。唯一,これまで行っていない条件としては,練上り温度が40℃というものでした。実は,その時いつものUWB以外に比較としてHEC(UWBのメチルセルロースが主成分ではなく,ヒドロキシエチルセルロースが主成分の特殊水中コンクリート用混和剤)についても同様の練混ぜ試験を行ったのですが,こちらはいつも通りの状態でした。一緒に行った上司がもしかしたら,空気連行させないために表面にコーティングしている膜が悪さをしているのかもしけないということで,その日は試験練り自体を中止し,原因究明してあらためて試験練りを行うことになりました。ただし,船が出航するまでの時間があまりなかったので,技術研究所に戻って急ぎ再現実験を行いました。To建設の技術研究所に持って行った混和剤を用いて,最初20℃で練混ぜを行ったところ,いつも通りの粘性のある特殊水中コンクリートになりました。次に,練上り温度30℃で行いましたが,こちらもいつも通りの特殊水中コンクリートとなりました。40℃での練混ぜを行うと, To建設での状態と同じように分離したコンクリートになりました。やはり,高温になるとUWBの効き目が極端に低下することが判明しました。どのあたりでその効き目が低下するのかの確認試験(30℃から,2℃刻みで練混ぜを行ってみました)を行ったところ,35℃を超えると効き目が落ちることが分かりました。急ぎ,UWBの販売をしているM化学に連絡をして状況を説明し,高温でも性能が低下しない混和剤の改良をお願いしました。その後,M化学から連絡があって,改良には少し時間がかかるとの返答で,最初の施工に間に合わなくなる可能性が出てきました。仕方なく,最初の施工にはHECを用いたもので対応することとし,改良版ができた段階でそちらに切り替えることになりました。再度To建設の技術研究所に出向き,HECを用いた試験練りを行いました。

 沖ノ鳥島へは,当然担当した私が行けると思っていたのですが,いろいろな業務が重なって(一度行くと2ヶ月以上戻ってこれない),私ではなくK社の特殊水中コンクリートの施工を担当しているKK社の人が行くことになりました。何せ,現地へは船に乗っていくか,自衛隊の連絡艇に乗せてもらうしかなく,船は一度現地に行くと1ヶ月はそのまま留まる(行き帰りで2週間ずつかかります)ので,今のようにネット環境があるわけではないので,行くのを諦めるしかありませんでした。その後,何回か行くチャンスがあったのですが,上司から対応はKK社に任せるので,現地での対応はないと言われました。自分が関わったコンクリートを現地で見れないのは残念だったのですが,サラリーマンとしては仕方ないところではないかと思いました。2か月後,上司から現地で撮った写真をもらいました。青い海に真っ白なコンクリートが打ち込まれているものでした。