法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

駄っ作試験機について(総括?,まとめ!?)

 私は,いつもあったらよいな的な発想でいろいろ試験機を考案していますが,前にも書いたようにどうも詰めが甘いようで,商売上手の人がやればそれこそ億万長者(ちょっと言いすぎか)になれたのではないかと思っています。商才のないことはよくわかってはいるのですが,ついつい世界に一つだけの試験機を作ってしまいます。あまりこんな話ばかり書いていても面白くないと思いますので,今日はこれまで書いてきた他の駄っ作試験機について書いて,このシリーズ終了にしたいと思います(また,ストックが増えてきたら書くかもしれません)。

 ダムコンクリートは,粗骨材寸法が大きく,私のいた現場もコンクリートの粗骨材寸法が150mmありました(大体ダチョウの卵くらいの大きさの石になります)。コンクリートの品質管理(スランプ,空気量,単位容積質量のフレッシュコンクリートの試験及び圧縮強度試験)を行う際,粗骨材最大寸法が150mmではそれらの試験を行うことができないので,40mmのふるいでふるって(ウェットスクリーニングといいます),粗骨材最大寸法を40mmにして品質管理試験を行います。ふるいは,作業員の人が3人がかり(2人がふるいをふるって,1人が試料をふるいに入れる)で行っていました。ふるいでふるうのは結構な重労働であり,コンクリート試験を行う前準備に3人も必要なことは無駄のではないかと思い,自動ウェットスクリーニング装置を考案しました。元々,骨材の自動ふるい機があるので,それを応用して製作すればよいと思い,早速製作して,作業員の方たちに使ってもらいました。最初これは楽でよいと言って使ってもらっていたのですが,ふるいに残った骨材(機械自体斜めになっていて,ふるいながら骨材を下方に移動させていくようになっています)を捨てるのが結構大変(ふるい終わってから,骨材の山を廃棄する大きな箱に入れるのが結構大変であった)であったのと,機械自体の速度が遅く,結局人でふるった方が早いということで,使ってくれなくなりました。

 コンクリートの品質管理では,圧縮強度試験を行うのですが,粗骨材最大寸法40mm(ウェットスクリーニングしたもので行う)なので,供試体寸法が直径150mm,高さ300mmであり,供試体の重さは約13kgになります。それを水槽で養生するのですが,その出し入れが結構重労働なので,半自動の引き上げ装置(油圧で供試体の把持とアームの上げ下ろしを行う)を考案して(ある試験機の展示会で用途は違ったのですが,重い荷物を片手で持ち上げる装置があったので,それを改良すればできるのではないか思ったのです),これも試作機を作って水槽の移動架台(水槽は結構大きいので,水槽の上を移動できるデッキ)に取り付けて,使ってもらいました。最初は腰の負担が減ったと作業員の方たちも喜んでくれたのですが,引き上げ装置を引き上げる場所まで移動させるのが大変(これは自動化していませんでした)ということで,これも結局使われなくなりました。

 あったらよいなというものも,すべてを満足(一つ満足できると次の要求が出てくる)することは難しいものだと痛感しました。この他にもコンクリートの比熱・熱伝導率測定装置やコンクリートの打継ぎ部のせん断特性試験装置(主に治具)だとか,塩水シャワー装置などがあります。土木構造物は一品ものですが,試験装置は汎用機となって初めて価値があるものですので,私が世に送り出したものは,その大半が駄っ作試験機ということになります。

 最後に,このような話を書こうと思ったきっかけは,昔愛読していた模型雑誌の記事に”世界の駄っ作機”というのがあって,古今東西失敗作の飛行機の話が書かれたものでした。どうしてそんなものを作ってしまうのかいうのが毎回出ていました。その後はその雑誌を購入しなくなったのですが,その記事が本になってしかもその9までシリーズで出てるのを最近知って,私が向こうを張って書けるのは何

かなと思ったときに駄っ作試験機があると思ってここに書き留めていきました。こうやって書いてみると,これまでよくこんなにいろいろ試験機のプロトタイプ(それも世界に一つだけの駄っ作試験機)を作られてくれたものだと,その懐の深さに今更ながら建設会社の研究所やダム現場に対して感謝の言葉しかありません。

これらの駄っ作試験機たちが,研究所や現場に少しは恩返しできていればよいのですが・・・。

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世界の駄っ作機