法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

この橋の向こう(新入社員研修編)

 新入社員研修の修了課題として出された犬小屋製作について,真理子たちはまずどのような犬小屋を造るのかというコンセプト案についてグループ内でデスカッションすることにしました。建築の3名の内,建築設計を希望している意匠系の男子社員(名前はまだ考えていないので,建築系A君とします)と女子社員(建築系Bさん)は,犬小屋自体のフォルムを奇抜な形(渦巻き状のものと校倉風のもの)を提案してきました。もう一人の男子社員(建築系C君)は,そんなに形にこだわることないのではないかという意見を出したものの,具体的なコンセプトは出してきませんでした(典型的な指示待ちタイプの設定にしたいと思います)。機電系の女子社員(機電Dさん)は,折角なのでカラフルな色(ピンクやオレンジを基調としたもの)で見栄えを良くしたらと提案してきました(何となく,タワークレーンや重機の塗装のイメージを頭の中で思い描いている画があると面白いのでは思います)。営業の男子社員(営業E君)は,お客さんが度肝抜くような形がよいので,如何にも高級そうな犬がたくさん住めるような豪邸みたいな犬小屋はどうかと提案してきました(何となくお約束のちょっとチャラい感じで,イケイケ男子という設定で,見た目はホストっぽいイケメンの設定)。開発の男子社員(開発F君)は,とりあえず手間をかけずに簡単に造れるものがよいのでないかと提案してきました(口だけは達者で中身がなさそうなタイプの設定にしたいと思います)。

 同じ建設会社といっても,考え方ややり方が全く異なることに真理子は驚きましたが,この全く違う方向を向いている人たちをどう同じ方向にまとめるのか,まずはそちらに注力しなくては思いました。真理子は,皆の意見(真理子がグループのリーダーという設定にしています)を聞いてから,自分のコンセプト案を話始めます。

 “最初に会社側がこの課題を出した意図を考えたいと思います。建設会社に入った私たちに何故犬小屋を造りなさいといったのかについて考えてみてください。私は,物言わぬ相手の立場に立って,相手が望むもの,満足するものをどのようにして提供するのかを考えなさいということではないかと思います。相手の気持ちも考えずに自分たちの思いだけを押しつけても,相手はきっと喜んでくれないと思います。まずは犬の立場になって考えたいと思います。

 犬は,元々野生だった狼(最初は人と敵対関係であった)が次第に人の住む場所に近づいていき,餌をもらったりしてそのうち人間に飼われるようになっていったと思います。ですから,犬の本能には狼のものがまだ残っていると思います。他者に対しての警戒心や元々穴のようなところで寝起きしたり,子育てしたりしていたと思うので,犬小屋の形としては,かまぼこみたいで天井が低く,入口も狭い穴のような形がよいのではと思います。また,丸くなって寝ると思うので,中は横に広く,元々四つ足での行動をしているので,高さはそれほど必要ないと思います。色は,犬が色盲だと聞いたことがあるので,特に派手な色でなく森の中の色(茶色や緑)でよいのではと思います。”

 他のメンバーからは,犬がそれで本当に喜ぶのか,会社側がそこまで考えて課題を出しているのかなど,真理子の意見を聞こうとしませんでした。結局,真理子の意見は通らず,意匠系の女子社員が提案した渦巻き状の形で機電系の女子社員が提案したピンク色の派手な犬小屋を造ることになりました。

 2日後,講評会が行われるのですが,それについてはまた次回書きたいと思います。犬の気持ちまでは分かりませんが,私たちは相手の立場に立って物事を考えているのか,少し考えてもらえればと思います。インフラでもそうですが,発注者の思いだけの箱モノ行政と揶揄されるものが結構多いことを皆さんはどう捉えているのか,たかが犬小屋,されど犬小屋です(最近,このフレーズが気に入っています)。