法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

この橋の向こう(社会人編,配属,続編)

 柳沢教授への報告の後,真理子は研究室に向かいます。そこで,吉川さんに会って配属先の報告をしました。吉川さんは,柳沢教授と同じようなことを言った後,“瀬川君の社会人生活始まったばかりじゃないですか。これからどんなことが待ち受けているかなんてわかりませんよ。そんなに焦らずにまずは目の前のことを一歩ずつ確実にこなしていって下さい。最初のうちは,余裕がないので周囲が全く見えていないと思います。そういう時は,まず手を止めて,周りの人たちがどんなことをしているのか少し眺めてみるとよいと思います。机に向かってずっとがむしゃらに仕事している人なんてそんなにいません。どのようにして集中を切らさず,息抜きをしているのか見てみるのも仕事をしていく上で大事なことです。

 同じ部署に何十年もいることはないかもしれませんが,それでも何年もいたら大きな波と小さな波(仕事の波のことです)のくる時期が段々見えてくるので,大きな波が来た時は,がむしゃらに頑張って,小さな波が来た時は少し手を抜くくらいの仕事をしたらよいと思いますよ。そして,波と波の間の凪のような時には,リラックスするなり,休暇取るなりして,次の波に備えて十分英気を養ってください。仕事は,短期勝負ではないので,うまく自分をコントロールできる人が,仕事のできる人だと思います。仕事のスイッチのオンオフができる人,自分が如何に楽できるか(仕事をサボるのでなく,仕事を任せられるように部下を如何に育てるかということ)が,会社で上に上がっていく秘訣ではないでしょうか。

 一人で何でも抱え込んでしまう人は,何時かパンクしてしまいます。そうならないためにも,気持ちの切り替えと仕事を如何にうまくこなすかが大事です。瀬川さんは,いろいろできる人だから,きっと上司が重宝してこき使うようになると思うので,そこはうまくやらないと仕事を抱え込みすぎて倒れてしまいます。自分は若いから大丈夫なんて決して思わないようにしてください。自分ができる範囲というか量を見極めておくことも大事です。ただし,できない人はそれを保身に使ってしまうことがあります。そうすると,上司からコイツはできないやつだとレッテルを貼られてしまう。そうすると,やりたい仕事も回ってこなくなって,雑用ばかりやらされるようになります。そうすると,仕事がつまらなくなって辞めてしまいます。

 真理子さんは違いますが,今の人たちは結構甘やかされて育ってきたと思います。欲しいものは買ってもらい,食べたいものは食べさせてもらい,叱られることがほとんどなく大きくなった人たちがたくさんいると思います。一見,幸せそうですが,打たれ強くないというか耐性がないというか,ちょっとしたことで,すぐに逃げ出してしまう人が多いのも事実です。意志の強い真理子さんでも,どんなことがキッカケでそんな状況に陥らないとも限らないと思います。昔ほど,会社も働く人たちも余裕がなくなっているので,本人たちが気の付かないうちに,人を貶めていることだってあるんです。ドンと構えて,多少何を言われても気にしないくらいのマイペースでやっていって下さい。いや,これは真理子さんには釈迦に説法だったかな”と最後は笑って話を終えます。

 真理子は,柳沢教授も吉川さんも私のことを親身になって思っていてくれていることを知って,思わず涙が頬を伝います(こんなシーンにしたいと思います)。

 後輩たちに会って,お土産を渡すとまた近いうちに来るねと言って真理子は研究室を後にします。