法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

テレビの取材になるはずだったが・・・

 先日,メールに事務からテレビ局からの取材申し込みのメールが転送されてきました。年に何回かあり,そのままテレビ出演したり,取材のための打合せをしたもののそのままボツになったりします。今回は,あるテレビ局の情報番組で“弊社の生放送情報番組「***」内のVTRコーナーにおきまして,番組にご協力いただけないかと思い,ご連絡させていただきました。”というものでした。放送は一週間後なので,土日でのインタビューなどできますかというものでした。インタビュー内容はというと,“「犬の散歩時の熱中症について」(犬は人間に比べると熱中症になりやすく危険で、早朝でもアスファルトは日の出と同時に温度は上昇するので、早朝ではなく、日が沈んだ後の散歩がいい)という新聞記事を紹介し、今回実際に犬はどれだけ熱く感じるのかを体験しようと思い、まずは地面の専門家様にご協力をいただき、ご取材をさせていただきたいと思っております。”というものでした。アスファルトの専門家を探したが見つからず,コンクリートの先生にお話し伺えるかどうかということで私のところにきたようです。アスファルトのどんな内容が聞きたいかもわからず,内容確認したい旨のメールの返信をしたところ,何時でしたらお電話できますかと言われたので,夕方だったら研究室にいますと連絡しました。その日の19時近くに番組ADのHさんという方が電話してきました。アスファルトのどんなことが聞きたいのですかと聞いたところ,どうしてアスファルトは熱くなるのか,アスファルトとコンクリートではどちらが熱く感じるか,またオリンピックに向けて遮熱舗装というのがされているがご存知ですかという返答でした。それに対して,熱を抑える方法はいろいろあるので,オリンピック用にどんなものを用いたかは知らないと答えました。アスファルトが熱くなるのは,色が黒だからであり,太陽光(主に赤外線)を吸収して,それが輻射熱として放熱する際に周囲の温度が上昇することも話しました。相手はよくわからなかったようで,とりあえずお聞きした内容を上司に伝えて,取材させていただくかどうかご連絡いたしますと言って電話が切れました。話の流れから言って,今回は取材なさそうだなと思っていたところ,翌日メールが届いて,“今回は,動物の専門家の方に話を伺うことになりました。申し訳ありません。そこで,図々しいお願いではありますが,昨日話されたアスファルトが何故熱くなるのか簡単にわかるような資料ありますでしょうか”というものでした。まあ,そうだろうなと思い,そのまま捨ておこうかと思いましたが,質問されたことに答えないのはどうも居心地が悪いというか,教員としてのプライドからかすっきりしなかったので,以下のような説明文を作成してADの人に送ってあげました。

 

 “アスファルトが熱くなる理由としては,アスファルトの色が黒いためです。

 下の図は,日本ペイントが出している色の明るさと日射反射率との関係です。日射反射率は,太陽からの熱をどれくらい反射するかというもので,黒い場合,熱の多くを吸収してしまうのに対して,白はほとんど反射してしまいます。では,吸収された熱はどうなるかというと,アスファルト表面から放熱されて(輻射熱),周囲の空気中の温度を上昇させます。この輻射熱とは,熱をもった物質(ここでは熱せられたアスファルトだと思ってください)が放つ電磁波(例えば,皆さんのスマホなどから発している電波も電磁波です)が別の物質(この場合は周囲の空気(酸素や窒素などの分子))にぶつかると電磁波のエネルギーが熱エネルギーに変換して(分子を振動させると思うとイメージしやすいかもしれません),周囲の空気を温める現象です(遠赤外線という言葉を聞いたことがあると思います)。

 最近では,日射反射率を上げるために遮熱性舗装というアスファルトを白っぽくさせる舗装が使われています。この辺りは,舗装会社に聞いてもらった方がよいかもしれません。日本は,黒い道路,ヨーロッパは白い道路と言われています。ドイツなどのアウトバーンはコンクリート舗装です。日本は,ほとんどがアスファルト舗装なので,黒い道路と言われています。アスファルトは,施工がしやすい(融点(溶ける温度)が100℃以下で,常温になると固まる性質がある)ので,舗装のように短時間で固まる(コンクリートの場合通常は28日,道路でも供用するためには数週間の養生がいります)必要のあるものには適しています。また,剛性(硬さだと思ってください)がコンクリートに比べて小さいので,振動や音を吸収しやすい性質を持っています。“

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色の明るさと日射反射率との関係

 この内容をどれくらい理解してもらったか分かりませんが,メールの返信は番組で資料として使わせていただきますというものでした。まあ,今までの経験からいって使わないでしょうね。