法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

モリナガ・ヨウの土木現場に行ってみた(沖縄編,後編)

 ダム現場は,パイナップル畑が左右に続いている道を進んでいき,その後山沿いの道を入ってしばらく行くと,ダムが見えてきました。ダム堤体工事自体は,8割がた終了していたので,ほぼダムの全貌(形状)がわかるような状態でした。現場事務所で簡単な説明を受けて,いつものように長靴とヘルメットを渡されたのですが,モリナガさんは以前の取材で長靴を借りて水虫を移されたので,今回は自前の登山靴(防水加工しているもの)を履きますと言われました。ダムの打設現場は湛水養生(水を張って,コンクリートが乾燥するのを防ぐととともに,セメントの水和に必要な水の供給も兼ねている)していて,防水加工くらいでは靴の中に水染みますよと注意したのですが,頑として聞き入れてもらえませんでした。後で聞いたのですが,案の定靴の中は水浸しになってしまったのですが,モリナガさん自身はその時何も言われませんでした。

最初にお立ち台といわれるダムの全景が見える場所に案内されました(右岸側)。ダム自体は重力式なのですが,形状としては重力アーチのように少し曲線を描いていました。説明された方から,“このダムは,日本でも数少ない海が見えるダムなのです。”といわれました。確かにお立ち台からでも海が見えました。その後,ダムの打設場所まで下りて行ったのですが,この時モリナガさんは靴の中がビショビショになったそうです。作業員の人たちが,ヘルメットにドーナツ型の日よけを付けているのを見て,日差しの強い沖縄ならではの風景と思いました(後に,共同研究で沖縄に毎年夏に行くようになり,このドーナツ型の日よけの有難さを身に染みて感じました)。

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大保だむ施工状況

打設現場では,ちょうどコンクリートを打込んでいるところも見ることができました。ダンプでコンクリートを運んできて,それを開けてバイバック(ダム用バイブレータを複数本つけたクローラ)で締固めている様子がみられました。私としては,懐かしい風景でしたが,モリナガさんにとっては結構衝撃だったみたいで,“コンクリート打ちながらその上に人が乗っています。沈まないのですか”と聞かれました。“コンクリート自体結構硬いので,大丈夫ですよ。バイブレータを足元近くに持ってきたら,沈んでしまいますが”と説明しました。また,ブロックごとに機械を使って亜鉛板をコンクリートに差し込んでいく目地切も興味津々で見られていました。すべてが新しいものの発見だったようです。

その後,バッチャープラントを見学し,モリナガさんは骨材の大きさにも結構驚かれていました。最後に,ダムの上流側に連れて行ってもらいました。“ダムに水を貯めると見られなくなる風景です。抜水するのは私たちが生きている間にはないのですから,よく見ておかれるとよいですよ”と説明を受けました。

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大保ダム上流からの風景

帰りは,那覇まで送ってもらって,二人で空港の食堂でビールを飲みながら飛行機の出発時間を待ちました。初めての沖縄取材(旅行)でしたが,とても楽しいものになりました。この数年後,毎年行くとはこの時は全く思ってもみませんでした。何度も行くうちにいつの間にか私も沖縄通になってしまいました。