法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

ハイドロクリート(続き)

 ハイドロクリートの海中長期暴露試験体の作製を終えて,大型梁に曲げひび割れを導入したり,海中暴露による鉄筋腐食を観察するための供試体の端面にエポキシ樹脂を塗布したりの準備を行い,五井の海に設置するまでの一連の作業に私も参加しました(本当に参加しただけで,ほとんど上司から指示されたことを行う作業員になっていました)。暴露試験の設置状況及び暴露後5年の結果については,以下の論文にまとめてありますので,興味のある方は読んでみてください。暴露試験自体は,5年,10年,20年だったのですが,結局私が暴露供試体の引き上げ及び試験ができたのは暴露後5年のみで,10年の時は転勤していてできず,20年は会社を退職して大学に移っているのでできませんでした。10年及び20年の試験については,会社にいた時の部下たちが試験自体は行い,供試体作製時の上司が論文としてまとめています。

 

・溝渕利明,大友忠典,本橋賢一,大野俊夫:海中・海浜環境下での特殊水中コンクリートの耐久性について,土木学会第43回年次学術講演会,Vol.43,pp.30-31,1988.10

・本橋賢一,溝渕利明,須田久美子:水中不分離性コンクリートを用いたRC梁の海中暴露実験,土木学会コンクリート委員会シンポジウム論文集,pp.153-160,1990.06

・大友忠典,本橋賢一,大野俊夫,溝渕利明,須田久美子:海中・海浜環境下での水中不分離性コンクリートの耐久性,鹿島技術研究所年報,Vol.38,pp.1-8,1990.10

・本橋賢一,大野俊夫,鈴木基行:水中不分離性コンクリートの海中RC構造物への適用に関する研究,土木学会論文集E2,Vol.70,No.2,153-165,2014

 

 暴露試験のように時間がかかる試験は,如何に早い段階で供試体を作製して暴露するかにあります。現在,実際に海中の暴露環境下で20年経過した鉄筋コンクリートの性状を確認したものは他になく,非常に貴重なデータとなっています。新入社員でこのような実験に参加させてもらったことは,一技術者として誇りに思っています。これを実行した上司に敬服いたします。普段はただの大酒のみのおじさんでしたが,私が会社を辞めて大学に移る前に亡くなられました。優秀な技術者というか研究者でしたので,六十歳前に亡くなられたことは非常に残念でなりません。生きておられたら,多くの研究成果を残されていたと思います。

 私が入社した時の研究室の室長だったK氏も六十歳前に亡くなられており,他にも私の入社と入れ替わりで転勤された方も定年前に亡くなられています。当時,立て続けに定年前に亡くなられた方が続いたので,技術研究所というか土木屋の寿命六十歳説が若手社員の間で実しやかに噂されたことがありました。確かに私が入社したころは,残業するのが当たり前で,月50時間以上,多い時は100時間以上残業していました(残業代は10時間分のみ)。当時の上司からは,君たちのような何もできない新入社員は,ベテラン社員よりも時間がかかるのは当たり前だし,残業している時の場所代や電気代は全部会社が負担しているんだぞと言われていました。サービス残業パワハラで今なら大変なことになっているでしょうが,当時はそれが当たり前だと私自身も思っていました。建設業の闇部分(ブラックなところ)なのでしょうが,その時歯を食いしばって頑張ったお陰で今があるとも思っています。ただし,定年前死亡説の噂はこんなところからも出ていたのかもしれません。なかなか明石海峡大橋の話に辿り着かないのですが,次回こそその触りくらいは書きたいと思います。