法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

セメント・コンペ

 明石海峡大橋の海中基礎工事において,その調査工事をK社とT社のJVで受注した関係なのか分からないのですが,当社の技術研究所に本四公団(海洋架橋調査会からだったかもしれません。何せ30年以上前の話で,私自身大学に移ってしまって当時の資料をほとんど全部技術研究所に置いてきてしまっているので,確かめようがありません)から,セメント各社(依頼当時,全部で11社あったと思います。今は統廃合されて数社に減っています)において公団が要求する海中基礎に使用する品質を満足できるセメントを拠出させて,横並びで試験して最も要求品質に近いセメントを選定してもらいたいという委託業務を受けました。私は,当時の土木部長が工事受注を目論んで,公団にセメント選定の営業を働きかけたのではないかと思っています。いずれにしても私にとって初めての外部受託(K社では社内の現場からの技術協力を内部受託,発注者(鉄道会社,電力会社など)からの技術協力を外部受託と呼んでいました)でしたので,半年近くそれにかかりっきりになっていました。

 検討は,セメント以外共通の骨材,混和剤を使用して,フレッシュコンクリート試験(スランプフロー,空気量,それらの経時変化,ブリーディング,凝結,濁度,pH測定),力学特性試験(圧縮強度,引張強度,ヤング係数,ポアソン比),熱特性試験(断熱温度上昇試験,熱膨張係数試験,熱伝導率試験,比熱測定(熱伝導率試験と比熱測定は技術研究所でできなかったので,建材試験センターに依頼しました))を行いました。とんでもない試験量でしたが,一連のコンクリート試験を入社3年目で任せられて,とても張り切っていたように記憶しています。確かフレッシュコンクリート試験と断熱温度上昇試験の結果がでたところで,各社を集めて結果について説明したと思います(この段階で3社か4社に絞ったように記憶していますが,定かではありません)。当時のセメントメーカは,殿様商売的なところがあって(コンクリートにはセメントが必須で,黙っていても売れていた時代でした),最初のうちは結構高圧的に言われた記憶があります。鉄鋼メーカも同様な感じでした。建設会社の立場というのは結構低いのだなとその時思いました。

 一次審査で絞ってから,残りの会社について残りの熱特性試験などを行いました。この時,初めて建材試験センターの中央研究所(確か草加市にあったと思います)まで出向いて,試験状況の確認というか立会を行ったと思います。とても広い研究所で見たことがないような試験装置がいろいろありました。試験法などの説明をしていただき,熱伝導率の測定方法や比熱の測定方法を知りました。すべての試験結果をとりまとめて,確か黄色いハードカバー(本四公団は黒表紙ではなく,黄色表紙にしていたと思います)の分厚い報告書を作成しました。それを2冊だったか,3冊だったか持って上司と一緒に神戸の本四公団の本社まで説明にいきました。同席したのは,他に本社の担当部長や調査工事JVの所長などのお偉方ばかりで,若手は私だけで凄く緊張したのを覚えています。結局,セメントのメーカを決めることなく,残った4社だったと思いますが,それぞれ区画(2Pですと,内核外核に区分)ごとで使用することとなりました(最終的には,セメントで優劣が明確にならなかったというのもあります)。その後,技術研究所ではセメント・コンペの結果を基に,スラグ微粉末を90%まで混和した特殊水中コンクリート用セメントの開発を行っています。これについては,次回書きたいと思います。