法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

この橋の向こう(新入社員編(シールドトンネル見学6))

 シールドマシンを見て,また40分ほどかけて戻ります。その間も真理子は,吉田といろいろ話をします。帰りは,新巻も参加して若者3人でのトークとなります。トンネル側面に取り付けられたキャットウォークを歩くので,画としては下からあおる様にして移動しながら少し遠目にして3人が入るようにして撮ります。真理子が“愛美さん,現場の面白さって何ですか。どんなところが楽しいんですか”と聞くと,吉田が“日々少しずつだけど構造物ができていくところかな。シールドトンネルは,言ってみたら芋虫,じゃないや,芋虫は穴掘らないもんね。元い,ミミズみたいに地中をはい回っている感じだから,周りは全く見えなんだけどちゃんと地面の下に潜っていくじゃない。ミミズには目も耳もないんだよ。でも,ちゃんと進んでいくんだ。不思議だと思わない。なんか光を感じる細胞があって,それで地中を進んでいくことができるだって。そうそう,なんでミミズっていうか知ってる?元々は「目見えず」だったらしいんだけど,それがメメズになって,今ではミミズになったって言われてるんだって。私の母親は岡山出身なんだけど,ミミズのことメメズって言って,凄く怖がっていて,小さい時それを聞いてたから,ミミズをみて,メメズがいるって言ったら友達にすごく笑われたことがあったの。友達から「あれは,ミミズっていうんだよ。メメズじゃないよ」といわれたのをよく覚えている。母親にそう話したら「お母さんのところでは,皆メメズって言ってたわよ。ミミズなんて聞いたことなかったわ」といわれたんだ。それで,調べたらさっき話したみたいなことが書いてあったんだ。それで,友達に「メメズの方が元祖なんだよ。ミミズはそれがなまって言うようになったんだ。だからメメズの方が由緒正しいんだよ」と後で言い返してやったの”と訳がわからない話をし出します。新巻が見かねて“吉田は,本当に負けず嫌いだな。吉田が話したかったのは,きっとフナクイムシの事だと思うよ。シールドトンネル工法を発明したのは,イギリスのブルネルという人なんだ。木材に寄生する虫で,木材を食べながら穴をあけて,後ろを殻で固めていくのを見て,シールドトンネル工法を思い付いたと言われているんだ。テムズ川の川底をこのシールド工法でトンネルを造ったんだ。これがシールドトンネルの始まりといわれている。”と真理子に説明します。吉田が“そう,それを言いたかったの。”と言って3人で爆笑します。帰りも,こんな吉田の頓珍漢な話であったという間に坑口まで戻ります。エレベータで地上に出て,その後排出した土砂の仮置きヤードなどを見て回りました。見学が終わったのは,既に日が西に傾きかけた時でした。事務所前では,夜勤の職員や作業員が集まっていました。これから,それぞれ昼勤のメンバーと引継ぎを行って仕事に向かいます。そんな風景を撮影しながら,3人の方に画を戻します。事務所に入って,所長はじめ,副所長,次長たちに挨拶して事務所を出ます。出がけに新巻が吉田に“今日は,半日付き合ってもらってありがとう。この後,3人で食事でもどうだい”と声をかけます。吉田が“新巻君と飲むのって久々だよね。分かった。事務所の会議室で少し待ってて。書類整理してからでるようにする。うーん,時間かかるかもしれないから,先行っててくれる。後から追いかけるよ。お店決まったら連絡くれる”と足早に事務所に入っていきます。新巻は“瀬川も大丈夫だろ”と言って“もちろんです。愛美さんの話もっと聞きたいと思っていたんです”と真理子は答えます。“じゃあ,駅まで行って店でも探すか”と新巻と真理子は,バス停の方に向かいます。