法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

卒論発表(2日目)

 一昨日に続き,昨日も9時から卒業研究の審査を行いました。2日目は,Ka君,Ku君,S君,T君,D君の5人が審査を受けました。Ka君は,クリンカ骨材の基礎物性についての発表でした。発表自体は,そこそこでしたが,どうも私の意図していることをなかなか理解してもらえず,結構よい結果が得られているにも拘らず,それがどういう意味を持っているのかわかっていないようで,表面的な結果だけを報告したような発表となってしまっていました。審査前に何度もやり直しをさせたのですが,十言って二くらいしか返ってこないので致し方ないかなと思っています。プレゼン自体の姿勢はとてもよいので,中身が伴えば高い評価が受けられると思いますが,まだまだ道は遠そうです。打てば響くような答えが返せるようになったら一人前かなと思っています。彼には,それができると思っています。長い目で見ていくしかないのかなと思いますが,私が今言えることは良い環境というかよい上司につけることを祈るばかりです。彼を生かすも殺すもそのあたりではないでしょうか。

 Ku君は,赤外線によるコンクリートの内部欠陥評価の研究成果を発表しました。彼自身研究にとても前向きに取り組んでいて,ここ数年停滞気味だった赤外線の研究が大きく進んだ気がしました。発表自体も相当に練習したようで,ゆっくり丁寧な口調で時間通りに終えました。プレゼンの重要なポイントとしては,相手に短い時間でどれだけ自分の思いを伝えるかにあると思っています。情報を詰め込みすぎても駄目ですし,内容が総花的で薄っぺらいものでも駄目なのです。私は,卒論審査で君の7分間のプレゼンで100億の工事の受注が決まるかどうか判断されると思って発表しなさいと言います。そのために,スライドは厳選されたもので,自分が一番伝えたい勝負スライドを必ず入れ込むことだと思っています。Ku君の発表はそつないものだったのですが,勝負スライドがなかったのが残念でした。質疑応答もちゃんとできていたので,上位を狙うための工夫がもうひとつ欲しかったように思います。

 S君は,機械学習を用いた打音検査による内部欠陥評価についての研究成果の発表でした。発表内容もよかったですし,勝負するスライドも用意していましたし,普段物静かであまりしゃべらない彼ですが,しっかりプレゼンできていました。質疑応答でもう少しはきはきと答えていたらもっと良かったかもしれません。まだ,実験途中の段階での審査となってしまったので,結果がいまいちというところも残念でした。これは,本人の責任ではないので,私自身は高い評価をしましたが(他の先生方も比較的高い評価をしていただいていましたが,結果の内容が少し弱かったのが残念でした),上位に食い込むまではいきませんでした。

 T君は,TSTM(温度応力試験装置)を用いたひび割れ進展挙動に関する研究成果の発表でした。実験自体はあまりうまくいかなかったのですが,得られた成果は結構いろいろあったと思っています。残念ながら,彼はその成果をうまく生かしきれなかったのと,研究内容を十分理解していなかったので,発表自体も?というものでした。また,彼は人の言うことをあまり理解できないのか,人の話の半分も聞かないうちに何か答えようとするので,全く見当違いな受け応えをしてしまいます。人の言っていることを一旦頭の中で咀嚼してから応えるようにすればもう少しまともな返答ができると思います。残念ながら多くの先生も私と同意見のようで辛口の評価となっていました。彼の性格なので,なかなか直せないと思いますが,社会に出て損をするタイプのような気がします。人当りは良いので,そういう方面の仕事が向いているかもしれません。

 D君は,ひび割れ発生強度及びひび割れ発生時のひび割れ幅の評価に関する内容について発表しました。発表内容自体は,真面目に取り組んだだけあって,良くまとまってはいましたが,もう一歩踏み込んだものにすればもっと良かったと思っています。勝負スライドもあったのですが,残念ながら彼自身その内容を十分理解していなかったようで,先生方からの質問に対して十分応えられていませんでした。もう少し研究背景,研究目的が理解できていれば,高い評価が受けられたのではないかと思っています。まあ,彼なりに十分頑張ったので,努力賞はもらえたのではないかと思っています。

 今年度の審査は,I先生のところが上位を独占していました。私からすれば,研究内容自体それほど目新しいものでもなく,新しい知見はそれほど見られなかったと思いますが,これまでと全く違った研究内容であり,珍しさもあったのではないかと思っています。ただし,各自自分の研究内容をしっかり理解していて,自分で何をすべきか,何が足りないのかよくわかっているのには感心しました。ちょっと気になったのは,優等生的な回答ばかりで,伸びしろというか少し外した質問には受け応えできていなかった点です。すごく成績良いけれど,先が見えている感じがしました。いわゆる化ける要素が皆無でした。その点,手前味噌になりますが,私の研究室の学生は,レベルは低いかもしれませんが,伸びしろというか化ける要素を持っていると思います。大学での評価などは,社会に出たらほとんど関係ないので,彼らが社会人として大いに成長するのを期待するとともに,立派になって何時か研究室に来てもらいたいと思っています。