法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

土木の仕事

 土木のことがよくわかる秘訣があったら教えてもらいたいものですが,残念ながらそのようなことが書いてあるものは見かけたことがありません。ただし,土木のことをよく知れば,当たり前ですが,自ずと土木のことがわかるようになるはずですし,そうなるとよくわかる秘訣も見えてくるのではないかと思っています。そんなことを最近はよく考えています。こんなことを考えるのは,毎年,その年度の仕舞い(期末試験や卒論審査が終わって,一般入試が始まる頃)が大体見えてきて,次年度のことをそろそろ考えないといけない時期にふっと頭の中に浮かんでくるのです。

 私自身,土木に関わってたのは大学に入学した時からですら,かれこれ40年以上になります。土木はどんな仕事をするのかなど大学に入ったときはほとんど知りませんでした。その頃は建物をつくるくらいのイメージしか持ち合わせていませんでした。ただし,大きなものを作るのが土木の仕事だと思っていて,自分も将来でっかいものを作りたいと思ってはいました。今から考えるとすごく幼稚なのですが,強ち間違ってはいなかったかなと思っています。今でも,土木って何ですかと聞かれると,回答に窮してしまうことがよくあります。まさかでっかいものを作っているのが土木の仕事ですと答えるわけにもいかず,皆さんの普段の生活を支えるために必要なことをしているのが土木の仕事ですとわかったようなわからない答えをしています。世間一般の人が持っている土木のイメージと土木に従事している人のイメージはかなり違うように思うのですが,具体的に何が違うのかいまいちうまく答えられません。ダムや橋を作るのが土木の仕事と言ってしまってもよいのかもしれませんが,それでは土木の仕事のほんの一部分というか氷山の一角しか説明していないことになります。こんな禅問答のようなことをこの時期ついつい考えてしまうのです。

 では,土木にはどんな仕事があるのでしょうか。土木の仕事の多くは,社会基盤の整備,いわゆるインフラの建設(計画,調査,設計,施工)と維持管理に関わるものです。インフラストラクチャーの整備は,多くの人が土木の分野だということを認識していると思っています。では,国が定める社会インフラとはどのようなものかというと,内閣府の場合「道路,港湾,空港,上下水道や電気・ガス,医療,消防・警察,行政サービスなど多岐に渡る」としています。また,公共施設は地域の核となる道路,河川,公園緑地,広場など住民生活に欠かせないサービス施設であり,教育施設,医療施設,コミュニティ施設,官公庁施設なども含まれるとしています。さらに,商業施設,銀行,郵便局や,通信施設,電気,ガス,水道などのライフラインも含まれるとしており,公共公益施設の利用促進のための自治体等が運営する循環バスといったものも公共施設の一部と捉えることができるのです。

 これらの公共施設の整備は,もちろん土木の仕事の範疇といえます。この他,携帯から人の行動パターンの調査・分析したりすることや,橋や建物が建設される場合どのような風景となるのかいった景観設計も土木の仕事であり,街の変遷について検討するのも土木の仕事の範疇です。

 こうしてみていくと,人々の生活そのものが土木の仕事に大きく関わっているということになります。少し大げさな言い方かもしれませんが,国民の隣で日々の生活をいつも見守っているのが土木の仕事であるといえるのでないかと思っています。やはり,最初に述べたような答えとなってしまいます。土木の仕事を説明することは,雲を掴むような話をするのと似ているのかもしれません。漠としていて,つかみどころがないのが土木の仕事なのかもしれません。