法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

これからの土木

 今日は,ボツ原稿の中でこれからの土木が進むであろう方向性について,私なりの意見を書きたいと思います。

 戦後荒廃した国土を復興させるために,社会基盤の整備が行われ,1960年代から1970年代の高度経済成長期に大量のインフラが建設されていきました。この社会基盤整備の目的の一つとして,先のオリンピックに間に合わせる必要があったことが挙げられ,そのために急速大量施工が行われたのです。この時行われた社会基盤整備としては,都市の区画整理上下水道施設の整備,高速自動車道路の整備,高速鉄道(新幹線)の整備等があります。

 それから50年以上が経過し,多くのインフラは更新時期を迎えています。また,東日本大震災津波による福島第一原子力発電所の事故によって,他の原子力施設の多くが停止したままの状態となっている一方で,地球温暖化による二酸化炭素排出量の削減が求められていて,二酸化炭素排出の多い石炭火力発電所の更新などが進んでいない状況にあります。この老朽化が進む膨大なインフラストックを一度に更新することは現状では非常に難しく,それらの多くを長寿命化させていく必要があります。また,上述した原子力化石燃料に依存している現在のエネルギー産業から再生可能エネルギーへ転換していく必要があります。

 したがって,これからの土木の仕事はこれまでの新設工事一辺倒から維持管理やリニューアル工事へとその主力を移行していくことになると思います。また,再生可能エネルギーとして風力発電の建設や既存ダムの機能向上を目指したダムの再生(取水能力の向上や嵩上げなど)が中心になってくるものと思われます。

 一方,今後急速に進む少子高齢化に対して,土木従事者の減少や専門技術者の減少に対する対応も行っていく必要があります。そのためには,建設工事のよりいっそうの省力化,自動化を推進していくとともに,AIなどを活用した無人化施工などに積極的に取り組んでいく必要があります。そのためには,これまでの土木分野だけでなく,その他の工学分野や理学,情報科学の分野と融合した新しい形の土木を目指していく必要があるといえます。

 もう少し先の未来を考えると,例えば現在ガソリンなどで走る自動車が今後電気や水素で走るようになるだけでなく,自動車に替りドローンが人やものを運ぶ手段となれば,現在の道路ネットワークの多くが不要になっていく可能性があります。また,リニア新幹線の技術がもっと汎用的なものになつて短時間に大量の物資や人を移動できることになり,さらに現在研究が行われている真空チューブによる輸送技術が確立すれば,より高速となって二酸化炭素をばらまいている飛行機に代わって世界中の海底や地下に輸送ネットワークができ,空を飛ぶ飛行機自体の需要が大幅に減少していく可能性もありうるのです。

 エネルギーの分野では,核融合技術によってエネルギー事情も一変していくでしょうし,自立型AI技術の進歩によってこれまでの土木工事での重労働・単純作業はロボットが替わって行うことになり,土木工事の完全自動化によって,山の中にいつの間にかダムができているというのもあながち夢物語ではないかもしれないと思っています。