法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

維持管理工学研究所

 当大学院には,特定課題研究所というのがありまして,2020年現在で34の研究所が設置されています(ほとんどの人は知らないと思います)。その中に私が所長を務めている維持管理工学研究所という鋼構造及びコンクリート構造物のインフラストラクチャーの維持管理に関する研究開発,調査,各種劣化試験,技術指導等を目的とした研究所(https://www.hosei.ac.jp/kenkyu/kenkyusho/tokuteikadai/tokuteikadai_list/tokutei_ijikanri/)があります。設立は,2011年だったと思います。初代所長はMY先生で,その後,MY先生が退職された後はMT先生が所長をされて2016年からは三代目の所長として私が勤めています。特定課題研究所というのは,大学のHPによると「大学院特定課題研究所は,受託研究費及び寄付金等の学外資金を事業運営費とし,社会的要請の高い学問分野での学際的共同研究を推進し, 本学の自主的研究活動及び新しい教育研究分野の開拓に資することを目的としています。」としています。要は,大学の研究所としての名前を付けてよいが,研究所の運用資金は自分で用意しなさいというものです。研究所の構成としては,研究員と大学院特任研究員となっていて,研究員は本学の専任教員となっています。大学院特任研究員は,研究所として必要な人員を大学が任期付きで承認してくれます。5年に一回更新しなくてはならず,次年度が更新年となります。現在研究員2名,特任研究員が7名ですが,2021年度からは少し規模を縮小して研究員2名,特任研究員4名の体制で行っていく予定です。一応,研究所の印鑑も最近作製しました。以前は,所長印としていたのですが,委託側から研究所として受託したのだから,報告書にも研究所の印を押してもらいたいという要望があったためです。

 設立当初は,MT先生と私の寄付研究,受託研究,科研費があったので資金としては比較的潤沢で,2017年度まではMT先生も研究員であったことから,年間数千万円くらいの資金がありました。2018年度からは,私だけになったのと,その年在外研究でパリに行っていた関係で,資金が大幅に減少してしまい,その後も数百万円程度で設立当初の1/3程度になっています。それでもここ5年間の平均が1千万円を超えていたので,少しは大学にも貢献していると思っています。特に,人件費が発生するわけではないので,資金が減ってもそれほど困らないのですが,それでもいろいろな実験関連の備品を揃えたりするのに若干不自由を感じるようになっています。MT先生の資金を私が使うということは基本的にないので,次年度以降少し縮小して運用していこうと思っています。

 維持管理に関するこのような特定研究所は,今後ますます需要が増えてくると思いますが,今のようなスタイル(寄付研究や受託研究を資金源としている)では,なかなかお金に繋がっていかないのも事実です。研究成果の特許取得やこれまで得られた知見を基にそれをフィービジネスに転換していく(そのためには営業をしないと駄目ですが,営業自体する人員がいません)など,受動的ではなく能動的にしていく必要があります。そうなると,本業である教育・研究が疎かになってしまうので,中々そのような方向に踏み出せないでいるのが現状です。できれば,特任研究員にリタイアした人材を増やして,その人たちに業務を行ってもらえるようになればよいのですが,今度はその人たちへの支払いが発生してきます。なかなか悩ましいところです。