法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

仕事は教えられても身に着かない,自分で苦労して初めて身に付くもの!

4月に入社して,そろそろ配属も決まり始めた頃だと思います。この新型コロナウィルスの影響で,多くの人は自宅待機になっているかもしれません。これを好機と捉えて,今こそ社会人になるためにいろいろ勉強するよいチャンスだと思ってください。ピンチをチャンスに変えていかないと,これから何十年も働いていくことになるのですから,仕事を続けていくこともままならなるかもしれません。今日は,私が新入社員だった頃の話を書きたいと思います。今から36年も前の話なので,今と大きく違っていると思いますが,仕事を身に付けていく方法は今も昔も変わらないと思っています。

私が会社に入ったころは,まだ会社にも余裕があった時代でした。上司が役所などの発注者への報告や打合せに鞄持ちと称して,新入社員や若手社員を一緒に連れて行き,自分たちの話し方や受答えを彼らに目の前で見せたものでした。そして,若手社員には必ず議事録をとらせ,打合せ内容がどんなものであったかまとめさせていました。これがまた大変で,何度も書き直されたのを憶えています。

最初は,打合せで話したことを,一生懸命メモをとって,それを書き直して提出したら,“これじゃ,単なるメモだろ。それだったらレコーダーで録音して聞き直したほうが早いではないか。何が議論されて,何が決まったか簡潔にまとめろ。議事録は基本的に1枚にまとめるものだ。ただし,抜けがあったらダメだぞ”と言われました。これは,打合せ内容を把握し,かつそれを他の人(基本的には会社の上司や相手先)が読んでもわかるようにしなければならないのです。つまり,簡潔かつ要領よくまとめられていなければ議事録の意味がないといわれたのですが,いわれた本人(私です)は全く理解できていませんでした。まだ,業務の内容も下手をしたら打合せの中で出てきた専門的な内容もわからないまま議事録を書けというのは少々無茶な話ではありますが,会社にとってはただ物見胡散で打合せや出張に連れて行っているわけではないし,当然費用も掛かっているのです。だから,ちゃんと結果を出せと暗にいっているのです。若手だからこの程度でよいというのはないのです。社員として会社に貢献(自分の給料分はちゃんと働けということ)しろということでもあります。また,上司たちは多くの業務を抱えているので,だらだらと書かれていて,決まったことも不明瞭な議事録など見るに値しないのです。わけのわからない議事録を読む時間は,会社にとっても上司にとってもそれこそ損失なのです。

どこを直せとは一言も言われませんでした。どのように直したらよいかも教えられませんでした。ただ,上述したことを最初に言われ,後は出しても出しても書き直しと言われました。最初のうちは,何故何度も書き直させるのか分からず,単なる部下いびりだと勝手に邪推し,上司を恨んだ時もありました。あの時のことがなかったら,仕事の仕方さえ分からない駄目社員となっていたと思います。教えられても身に付くものでなく,自分で苦労して初めて身に付くものだということを,それこそ身を持って教えられたと思っています。今から思えば,企業内トレーニングの一環だったと思います。上司もそれだけ部下に目を配る時間がまだあった時代だからできたことだったと思っています。私が敬愛する宮大工の西岡常一氏の唯一の弟子である小川和夫氏は,弟子入りしたものの,最初の数年間は何も教えられることはなく,ただひたすら鉋や鑿の刃を研がされたと話をされています。技は教えられても身に付かない。自分の仕事から技を盗み取れと言われたと述懐しています。いわば,仕事は自ら身に付けようと思わないと身に付かないことと同じことを西岡氏は態度で示されたのだと思います。