法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

段取り9割

 以前,ブログで“カッコ良い現場マンになるための必須条件”というタイトルで現場作業での心得のようなことを書きました。大学の授業でも話していますが,建設業だけでないかもしれませんが,段取り(事前準備)が如何にちゃんとできているかで,作業の可否というか成功するかしないかが決まってきます。土木の世界ではよく段取り9割と言われます。この中には,実際の作業でのトラブル回避とトラブルがあった場合のリカバリーも含まれています。極端な話,作業中にどんな状況になっても対応可能な体制にしておくことが重要と言えます。そのためには,自分が行う作業の完成形が頭の中にイメージできている必要があります。それは,作業の大小に関わらず,作業手順とその時の人や物の配置,動きが頭の中でシミュレートできているということです。それができれば,作業に必要なものが何か,いくついるのか,どれくらい準備時間が必要かなど見えてきます。

 昨日,共同研究先で大型の供試体作製のコンクリート打込み前の確認作業に立ち会いました。予定したセンサがちゃんと設置位置にあるか,配線の取り回しや番号の確認(コンクリートに埋まってしまった後では,供試体から出ている線しか見えないので,ちゃんと番号が付いていないとわからなくなってしまいます。配線間違いというか図面とセンサの設置位置が違っていると,変な結果になってしまいます。意外と埋まってしまってどうなっているか分からないということが往々にしてあります(見えてるときは自分の目である程度追えるので,確認忘れをしがちです)。それと,打込み順序の確認と共有というのも大事です。どういう順番で打つのか,コンクリートにセンサを埋める時の留意点などもお互い確認しておく必要があります。土木,建築の作業は一人ではできないので,作業をする人間同士の意識というか感覚を共有しておかないと,思わぬミスをしたり,事故に繋がったりします。自分は分かっているから相手も自分と同じようにわかっているという思い込みは絶対にしてはいけないのです。

 もちろん,経験値も重要になってきます。似たような作業を何回も経験しているのと,初めてだと,動きも違いますし,経験が多いと無駄がなくなります。初めてだと,自分が何をしたらよいのか,どのように動いたらよいか考えながら行うので,どうしても動きに無駄が出てしまい,あらぬ失敗をしてしまうのです。そういう失敗を積み重ねて,経験値を積むのですが,最近の学生は意外と最初からこの程度で大丈夫だとか,これくらいでできるだろうという変な思い込みをしていることが多いです。もしくは,目一杯作業を詰め込んで,二進も三進もいかなくなって,結局手戻りばかり増えてしまうということがあります。今の学生を見ているのと,変な余裕というか自分の能力を過大評価しているのか(自信過剰なのか),コンクリート打込み前日に1週間以上前に行っておかなければならない作業をしているという光景を最近よく見ます。

 何も考えていないのだろうと思いますが,半年後には社会に出て仕事する人間なのかと思ってしまいます。稚拙だと一言で片づけられないものがそこにあるように思います。まあ,自分の生活がかかっていないというのが最も大きいのかもしれませんが,変な余裕,変な思い込みを持っている(慎重さに欠けるのかもしれませんが)のが気にかかります。痛い目にあわないとわからない(それさえ感じない輩もいますが)のかもしれませんが,建設業では命を落としかねない事態になってしまいます。失敗をすることは大事ですが,無策で失敗しても何もそこから学ぶことはありません。自分が現在持っている力を精一杯に出して,段取り9割を目指してもらいたいと思っています(耳が痛い学生が何人もいるはずです)。人からいくら言われても,自分で意識しないとできないことも知ってほしいものです。