法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

一般の人から見た土木技術者とは?

 土木学会誌の編集委員をしていた時に,特集の主査を一度だけしたことについて,これまで何回か書いてきました。その特集の中で,小学生から大学生までのお子さんを持つ土木に関係ない親御さん約130 人にアンケートをしました。アンケートの質問は,全部で5つあり,①土木技術者と聞いたときの印象,②子どもが土木の道を選びたいと言ったとき賛成か反対か,③子どもが土木関連の仕事に興味があるかどうか,④子どもの性別,現在の就学状況(小中高大の何れか),⑤回答者の性別と年齢層について質問をしました。回答者は,母親が47 %,父親が47 %,祖父母が1 %,無回答が5 %でした。回答者の年齢層は,30 歳代,40 歳代が90 %以上を占めていました。一方,子どもの年代は小学生以下が60 %以上を占めていて,高校生が10 %で残念ながらこれからどのような道を進むのかの別れ道となる年代の親御さんから回答が得られませんでした。ただし,これから進むべき道を選択していく自由度の高いお子さんを持つ親御さんの意見を聞くことができました。ちなみに,お子さんの性別は息子さんが49 %,娘さんが44 %で若干息子さんを持つ親御さんの回答が多い結果となりました。

 最初の質問である土木技術者と聞いたときにどのようなことが頭の中に浮かびますか?に対する回答は,ある程度想定はしていましたがやはり土木技術者と土木作業員の区別は多くの人ができていないことが分かりました。回答の中には,重機に乗っている人,肉体労働,汗臭いといったものがありました。その他,ヘルメットに作業服,測量する人,道路・橋をつくる人という回答もありました。また,ガラが悪い,豪快な人,ニッカポッカなどと回答している人もいました(完全なガテン系の職業と思っているようでした)。もちろん,設計に関わっている人,高度な知識・高い技術を持った人,緻密な計算が必要な仕事,ものづくりのエキスパートなどといった土木技術者としての認識をもった回答もありました。

 土木の仕事は,建築と違ってなかなか顔の見えてこない業種であり,土木の印象の問いに対してダムや橋,道路などの構造物をイメージする回答もありました。これは,土木事業の性質からいって当然かもしれません。また,土木の仕事についてのイメージとして,3K である「きつい,汚い,危険」を挙げている人が多数いました。一方で,よい暮らしのための土台をつくる人,自然を相手にする大変な仕事などの社会貢献しているイメージを持ってくれている人たちもいました。

“お子さんが土木の道を選びたいと言ったとき,賛成しますか反対しますか”という問いに対して,面白かったのは約6割のお父さんが反対と答えていることでした。回答の理由に,娘だから,危険だからといった理由を挙げておられました。この時のアンケートでは,母親のほうが理解を示している結果となったのです。これはちょっと意外でした。

 ある程度想定はしていましたが,この時のアンケートで一般の人がworker とengineer との違いを明確に理解しないことがはっきりとしたことでした。土木技術者の社会的地位を向上させるためには,一般の人たちに土木技術者の正確なイメージをどう伝えていくかが重要であることを思い知らされた結果でもありました。このアンケート結果から,土木の映画やドラマを作りたいと思った次第です。