法政大学コンクリート材料研究室

法政大学コンクリートの活動報告

引継ぎ

 卒論審査,修論審査も無事終了し(人によっては無事ではなかったかもしれませんが),学部生の卒業研究の仕舞いと引継ぎの時期がやってきました。私の研究室は,研究テーマ自体が何年にも渡って継続しているものがほとんどなので,現4年生が新4年生にしっかり1年間行った内容,使用した試験機やソフト関連の引継ぎをしてもらう必要があります。とはいえ,新4年生は何をするのかほとんど理解していないので,引継ぎというよりも,4年生の片付けとデータ整理が主となります。きちんと内容まで引き継げれば,手戻りなく次年度の研究が進むのですが,今までうまくいった試しはありません。そのため,大学院に進学する学生にどうしても負荷がかかってしまうことになります。ただし,1年間一緒に研究をしていても,他の人の研究内容の詳細まで理解しているわけではないので,どうしても4月~6月くらいは失敗の連続となってしまいます。半分くらいの学部生が院に進学してくれれば,3年間研究を進められることができるので,研究内容も充実してきますし,成果も自ずと増えていきます。

 以前は,一緒に練混ぜしたり,解析したりしていたので,私自身試験機やソフトを使いこなすことができたのですが,最近はほとんど院生と技術嘱託の方にお任せ状態となっています。ありがたいことに院に進学してくる学生は皆しっかりしているので,失敗もありますが概ね上手くそのあたりは引き継がれているように思います。特に,歴代の技術嘱託の方たちが皆その道のプロに近い方たちなので,困ったときは技術嘱託の方にお願いすることが多々あります。特殊な試験機器が当研究室は多いことから,その操作方法をしっかりマスターしていただいているだけで,こちらとしても安心して学生に実験をさせることもできます。特殊試験装置の中でもTSTM(Thermal Stress Testing Machine)という実構造物内部の打込み直後からの温度履歴と構造物の拘束状態を自由に設定できる装置での実験は,学生だけでやらせると大体失敗してしまいます。いろいろなところに気を使いながら実験準備しなければならないのですが,そのような繊細な作業が学部生ではほとんどできず(適当にやってしまう),大体トラブルを起こすのです。今年の4年生は,技術嘱託の方が交代した年ということもあって,2/3は失敗してしまいました。その失敗経験を生かして, 4月以降新4年生をうまく指導してくれればと思っています(彼は大学院に進学します)。

 大学院に進学して一番良いのは,これまで教えられていた立場から教えなければならない立場に替わることで,自分自身のスキルアップができることだと思っています。会社などでは入社して2年目で新入社員を指導することなど考えられません。ましてや下手に教えて会社に損失などを出した場合には,本人だけではなく上司も厳しく叱責されることになり,場合によってはキャリアダウンにまでつながることになります。大学はあくまで教育の場であることから,たとえ失敗しても本人も4年生もそれで退学になったり,単位を落としたりするということにはなりません(指導教員からは厳しい叱責を受けることになるかもしれませんが)。もちろん,大学院での2年間がすぐに社会に出て役立つわけではありませんが,10年後,20年後にボディーブローのように効いてくるのです。特に理系学部はその傾向が強いと思っています。キャリアメイクの下地は大学院の2年間に培われているのです。残念ながら多くの学生はそれを知らないで社会に出ていくのです。目先のことに目を奪われてしまって,将来設計を十分にしていない学生が実に多いのが残念でなりません。